スマートフォンやタブレットが手放せない現代、消費者の注意は常に細分化され、ブランドが記憶に残ることが一層困難になっています。このようなマルチタスキング時代において、自社ブランドを消費者に「選ばれる存在」として確立するためには、従来のブランディング手法だけでは不十分です。
本コラムでは、ブランディングの根源的な目的を再確認し、注意が分散する現代でいかにしてブランドの便益と独自性を伝え、記憶に定着させるかを探ります。さらに、移り変わる消費者の行動や心理を正確に捉え、効果的なブランディング戦略を構築するための「リサーチの価値」に焦点を当て、選ばれ続けるブランドを育むためのヒントを提供します。
「ブランディング」とはブランドの目指すべき理想像や提供価値を明確化し、商品・サービスや顧客体験として具現化する取り組みを指します。その取り組みを通じて消費者との接点を広げ、ブランド体験を重ねながら購買や利用の場面で自社ブランドが選ばれるように育てていく営みです。
「ブランド」の起源は、放牧された家畜に「焼き印」を押して所有者を区別した慣習にあります。その後、ブランドという概念は区別・識別を超えて広がり、品質定評(あのブランドであれば品質が良いなど)や共感愛着までを含む“ブランドは資産”という「資産概念(将来の価値を生み出すもの・価値を増大させるもの)」へと拡張されていきました。
1つ目:ブランドを記憶にとどめ、想起される存在にすること
ブランディングの主な目的のひとつは、そのブランドの「認知・記憶・想起性」を高めると同時に、ブランドが持つ特徴や便益・独自性について正しく「認識」してもらい、「ブランド連想(消費者の頭に思い浮かぶブランド固有のイメージや意味のつながり)」を強化・増大させることです。
■ 認知、記憶、想起、認識、ブランド連想
「認知」とは、たとえば「JUST DO IT」というスローガンや「スウォッシュマーク」のロゴを見て「知っている(これはナイキだ)」と気づくことです。
次に「想起」とは、購買場面や利用シーンでブランドを自発的に思い浮かべることを指します。たとえば「スポーツブランドといえば?」という問いに対して「ナイキ」と答える場面が想起です。
さらに「認識」とは、そのブランドがどのような特徴や便益を持つのかを把握し理解している状態です。たとえば「ナイキはプロアスリートのスポーツ用品からタウンユースのスニーカーまで提供し、機能性とファッション性を両立している」と理解していることがそれにあたります。
「ブランド連想」はブランドを思い浮かべたときに結びつくイメージや意味のネットワークを指します。豊かで解像度が高いブランド連想を持つほど、購買や利用の場面でそのブランドが選ばれる可能性は高まります。
こうした「認知」「想起」「認識」「ブランド連想」を結びつける中間的な役割を果たすのが「記憶」です。記憶(記憶化)は、過去のブランド体験や広告情報を将来の選択に備えて蓄積しておくことを意味します。一つひとつのブランド体験が積み重なりブランド連想として記憶に定着し、特定の場面でどのブランドが思い浮かぶかを左右する基盤となります。
もっとも、消費者はブランド選択の際に蓄積された記憶のすべてを参照するわけではなく、その一部が購買機会や利用シーンに応じて活性化し、選択に影響を与えます。そして、その記憶自体も時間とともに薄れ、ブランドが思い出されにくくなっていきます。このため、ブランドは消費者との接触を通じて記憶を再活性化し、ブランド連想を維持・強化する継続的な働きかけが求められます。
図表01:ブランディングにおける認知、記憶、想起、認識、ブランド連想の概要
| 認知 |
ブランド名やロゴなど(外部刺激)を見聞きして「既に知っている」と判断すること |
| 記憶 |
これまでのブランド体験や広告情報を、将来の選択に備えて頭の中に蓄積して保持すること |
| 想起 |
購買場面や状況をきっかけに記憶を呼び出し、自発的に特定のブランドを思い出すこと |
| 認識 |
そのブランドが何であるかを把握し、その意味や特徴・便益などを理解していること |
| ブランド連想 |
記憶や認識を基盤として頭の中で広がるブランドの意味・特徴・便益などに関するイメージのネットワーク |
■ 「カテゴリーエントリーポイント(CEP)」と「メンタルアベイラビリティ(想起のしやすさ)」
ここまでを踏まえると「ブランディング」とは、消費者の記憶の中に望ましいブランド連想を定着させることだといえます。消費者が購買や利用の場面に直面すると、状況やニーズに応じて過去の記憶の一部(その場面に適したブランド連想)が呼び起されます。
このとき、どのブランドが想起されるかを左右する“入口(瞬間)”が「カテゴリー・エントリー・ポイント(CEP)」と呼ばれるものです。CEPと結びついた幅広く強固なブランド連想を有するブランドであるほど想起されやすく、そのブランド連想を含めた“想起のされやすさ(その場面でのブランド連想と広告メッセージがリンクしていなければならない)”を「メンタルアベイラビリティ」と呼びます。
「メンタルアベイラビリティは状況に応じた想起のしやすさを帯びたブランド連想である」という考え方は非常に重要です。
たとえば、筆者はコーヒーのカテゴリーユーザーですが、午後11時の私はコーヒーカテゴリーのホットゾーンにはいません(カフェインで目が覚めてしまうからです)。しかし午前11時では状況が異なります。さらに会議の合間に眠気覚ましに、会社近くのコンビニのカウンターコーヒーを買って飲みますが、起床時の家で飲むコーヒーは手淹れコーヒー(ハンドドリップ)です。会社に着き仕事を始める前のコーヒーは缶コーヒーであるなど、時間帯や状況によって思い浮かぶカテゴリー(サブカテゴリー)は変わります。また、いくつかのパターンが存在しています。つまり、それぞれの状況(CEP)でメンタルアベイラビリティを獲得するブランドは異なってきます。
コーヒーのCEPの具体例は下図表02のとおりです。調査票に落とし込む際は、利用文脈を反映させた各要素をつなげた観測変数を作成し調査にかけます。
図表02:コーヒーのCEPの一例
| 飲むタイミング |
飲むシーン |
誰と |
そのときの気持ち |
目的・理由 |
| 朝起きてすぐに飲む |
出勤前に |
一人で |
頭をスッキリさせたい |
眠気を覚ますため |
| 午前の休憩時間に飲む |
カフェで仕事をするとき |
職場の同僚と |
集中したい気分 |
気分転換をするため |
| 夕食後に飲む |
本を読むとき |
友人と |
リラックスしたい |
特別な時間を演出するため |
このCEPに関する自社ブランドの占有率が高いほど、他のブランドより先に・有利に想起されやすく、競合よりも優位に立てます(これを「メンタルアドバンテージ」と呼びます)。したがって「ブランディング」とはメンタルアベイラビリティを構築することを含み、顧客の利用文脈にあわせた記憶を刺激し、購入すべきブランドとして想起されやすくするということといえます。
CEPについて詳しくは「『カテゴリーエントリーポイント(CEP)』を正しく理解し、実務で活用するために」をご覧ください。
■「フィジカルアベイラビリティ(買い求めやすさ)」
購買環境下で「ブランドを思い出したのに売っていない」では買われませんし、「売っていても思い出してもらえない」では選ばれません。想起されたブランドが買える場所にあり、見つけやすく、手に入れやすいという「買い求めやすさ」が「フィジカルアベイラビリティ」です。フィジカルアベイラビリティ(上記前者)とメンタルアベイラビリティ(上記後者)の双方の“しやすさ”が求められます。
「フィジカルアベイラビリティ」に関する構成要素は「➀プレゼンス(存在感があるか)」「➁プロミネンス(目立っているか)」「➂レレバンス(自分にとって重要か)」とされています(ジェニー・ロマニウク、2022)。これらの要素は店舗・店頭で実際にそこにあるか、どれだけ気づかれやすいか、その場のニーズや状況とどれだけ結びついているかといえます。
購買前にブランドが既に決まっている場合は習慣的な購買行動が取られ、フィジカルアベイラビリティが優位です。私たちは“いつもの買い物”では早々に買い物を終わらせたいと考えるからです。“いつもの買い物”ではない場合も、ブランド記憶を総動員してブランドを選択しているわけではないはずです(購買判断に時間をかけることは負担がかかるからです)。そして、記憶は不変的なものではなく、時間とともに変化します。
このことから、ブランド資産(広告施策などで蓄積された記憶・ブランド連想)や買い求めやすさを維持・向上させる必要があり、ブランド訴求の新鮮さと一貫性を持たせることも重要となります。
2つ目:ブランドの便益と独自性を提供すること
ブランディングのもう一つの主な目的は「便益≒買う理由(選ばれる理由)」と「独自性≒他の商品・サービスを買わない理由」を提供することです(西口一希、2024)。
「便益」とは消費者がブランドや商品・サービスを利用することで得られる、実際に感じ取れる利得を指します。機能的便益(機能的ベネフィット)と情緒的便益(情緒的ベネフィット)に大別でき、機能的便益はリアルベネフィット(基本機能)/使用簡便性ベネフィット、情緒的便益は感覚的ベネフィット/心理的ベネフィットに区分することができます(近藤真寿男・近藤浩之、2012)。
※自己表現ベネフィットは(下図表03)、心理的ベネフィットの拡張概念としてここに位置づけて整理しています
図表03:便益(ベネフィット)の概要
| 機能的便益 |
リアルベネフィット(基本機能) |
製品やサービスが持つ「性能・効果・機能」に直結する便益 |
| 使用簡便性ベネフィット |
「使いやすい」「すぐできる」「手間がかからない」という利便性 |
| 情緒的便益 |
感覚的ベネフィット |
「香りがいい」「色がきれい」「触り心地が良い」など、五感を通じて得られる感覚的な満足 |
| 心理的ベネフィット |
「安心できる」「楽しい気分になる」「誇らしい気分になる」といった心理的な満足 |
| 自己表現ベネフィット |
ブランドを使うことで自分のアイデンティティやライフスタイルを表現できる便益 |
これらの便益(ベネフィット)は、時代や競争環境に応じて高度化していきます。たとえば、下図表04です。
近年の例示でいえば、Netflix などの動画配信サービスは、大量の作品ラインアップ・画質/音質・ダウンロード視聴・レコメンド/パーソナライズがリアルベネフィットにあたり、続き視聴・倍速/予告スキップ・マルチデバイスでのシームレス視聴が使用簡便性ベネフィットにあたります。さらに、映像世界への没入体験(大画面・高音質の快感)や、コンテンツを拡充させて週末のリラックス・日々のご褒美・家族団らん/子ども向けフィルターの安心を醸成させたことは感覚的・心理的ベネフィットに位置づけられます。
Netflix は 1999 年に月額の DVD 郵送サービスから始まり、2007 年にストリーミングへ軸足を移し、インターネットの高速化とデバイスの多様化に伴って、上述の便益へと拡張しながら顧客体験を進化させていきました。ここで重要なのは、便益は絶対的なものではなく、技術の進歩や競争環境に応じて“相対的に”より高次のものへ再定義されていくという点です。
かつて衣料用洗剤では「強い洗浄力」= リアルベネフィット(基本機能)が価値の中心でした。洗濯機の普及という利用環境の変化に合わせて「手洗いから解放される暮らし」「時間にゆとりのある暮らし」といった生活価値の物語が語られるようになり、さらにテレビの普及というメディア環境の変化によって、その物語が家庭の中に広く共有されました。――このように、基本機能 → 使いやすさ → 体験・感情 → 自己表現へと、便益の焦点(ブランディングの観点を含む)は段階的に引き上げられていきます。
この便益の高次化を生む背景には、生活インフラやメディア環境の変化にともなって「何をもって豊かと感じるか」という基準そのものが絶えず更新されていくことがあります。更新された基準を“新しい豊かさ”と呼ぶなら、ブランディングとは時代ごとにその“新しい豊かさ”の意味を再定義することを含むと考えることできます。
図表04:便益(ベネフィット)の高度化
出典:成功する商品開発~「買いたい」をつくる、2012年、近藤真寿男・近藤浩之、B.M.FT
スマホが握る注意と購買――ブランディングの重心移動
日本の広告費は2019年に転換点を迎え、インターネット広告費(2兆1,048億円)がテレビ広告費(1兆8,612億円)を初めて上回りました。2024年(最新データ)は、総広告費7兆6,730億円のうちインターネット広告費が3兆6,517億円(47.6%)、テレビ広告費が1兆7,605億円(22.9%)です。2019年から2024年の伸び率は、総広告費が+10.6%、インターネット広告費+73.5%、テレビ広告費−5.4%です(左記の数値は電通「日本の広告費」2019、2024)。
iPhone(2008年日本上陸)とTwitterなどの海外SNSの大衆化(2010年前後)を起点として、生活者の“視聴”と“購買”はスマホ中心に拡張されていき、結果、メディア環境は注意の集まる場(タイムライン/動画プラットフォーム)と購買の場(EC・アプリ)が地続きに連結した“行動直結型”へと変貌しました。測定可能性(計測・最適化)と広告在庫(配信可能な広告枠・インプレッション)の急拡大──検索・SNS・動画・コネクテッドTV・リテールメディア・アプリといった配信面の多層化──を背景に、ネット広告は短期間でテレビCMを凌駕する規模に達しました。
とりわけ2019年の逆転以降は、コネクテッドTVや配信系動画の伸長、キャッシュレス・ECの一般化、そしてコロナ以降の生活様式の変化がこの流れを一段と加速させたと考えられます。要するに、ネットは“新しい巨大な到達と即時の行動接続”を同時に手に入れたことで、投資の説明責任(ROAS、CPA)に応えながら面でリーチを積み上げられる媒体になったということです。
一方のテレビは、短期間に全国の多様な層へ一斉到達できるユニークリーチに強みがあり、店頭購買を伴うカテゴリーでは大規模な需要喚起に有効です。ただし、クリックから決済までの“即時・可観測な購入動線”ではネットが優位で、投資配分はこの役割分担(テレビCMで大規模認知/ネットで検索・比較・購入を取り切る)を前提に再設計する動きが加速しています。結果、オンライン起点の影響力が相対的に高まり、メンタルアベイラビリティを高める領域はネット空間にシフトしています。その一方で、フィジカルアベイラビリティは店頭とECの両輪で設計するのが基本線となっています。
その理由はシンプルで、①到達と行動が一体化(想起→検索→比較→購入が地続き)、②学習速度の優位(計測→A/Bテスト→差し替えを短周期で回し、クリエイター活用/UGCの二次利用でクリエイティブのバリエーションを量産)、③面の到達の内包(コネクテッドTV/配信動画で“テレビ的リーチ”もネット側で確保)の三点が同時に成立可能だからです。結果として、リテールメディアやアプリ内購入までをも接続し、CEPに沿ってメンタルアベイラビリティを積み上げる統合設計が可能になっています。
もっとも、テレビCMなどのマス媒体は「短期間に広いユニークリーチ」「共通文脈の形成」で依然強く、「マスで広域認知→ネットで検索・比較・購入を取り切る」という役割分担が合理的でしょう。要は、ネットを中核に、マスと実売(フィジカルアベイラビリティ)を束ねる全体設計が、多くのカテゴリーにおける現在のブランディングの当たり前になっているといえるでしょう。
両利きのブランディング――タイムラインから売場まで
日本の若き哲学者である谷川嘉浩氏は「増強改定版 スマホ時代の哲学‐「常時接続の世界」で失われた孤独をめぐる冒険」の中で、現代の生活者を取り巻く状況を以下のように記しています。
- 時間もかからず、知識も努力もなしに満足を与えてくれる感覚やコミュニケーションの刺激にいつでもアクセスできる時代に生きている。
- 車移動や電車通勤のとき、会議のとき、寝起きの布団の中で、料理中に、あるいは、トイレや風呂にいるとき、映像、絵、音、文字などのメディア化された無数のコンテンツに、いつでもふれることができます。スマホやタブレットのような、ポータブルなマルチタスクデバイスがあるからです。そこで目新しく見慣れない情報を次々取り入れている。
- モニター上では、話題になっていたNetflixの新作ドラマのPVが自動で流れた状態のまま、実況者の深夜配信のアーカイブをイヤフォンで聴き、スマホ上で画像をレタッチ(加工)して友だちに送りながら、さきほど仕掛けた「ほったらかし家電」から漂ってくる角煮のにおいを感じている。この間、スマホではさっき買った電子書籍のダウンロードがバックグラウンドで処理されていて、パソコンではDiscordで別の友人と通話をつなぎっぱなしにしている。
- こんな生活は、さほど珍しいものではないしょうが、これを「激務」と呼ばずしてなんだというくらい、私たちは細かなタスクを同時並行して行っています。同時並行していることに気づいていないくらい当たり前の行為ですね。それぞれのコンテンツやコミュニケーションへの参加度合いは薄いものになっているため、消費環境のほうも、前提知識なく消費しやすく、満足も短い間に得られるように最適化されています。
上記を踏まえた、マルチタスキング時代(※)のブランディングにおける問題の核心をひと言でいえば、注意が断片化し低関与の接触がアルゴリズムで細切れに流れるため、ブランドの意味づけ(解釈・認識形成・理解の深さ)が浅くなり、記憶に残る想起の結節が育ちにくいということです。
※マルチタスキングとは、限られた時間の中で複数の課題を同時に処理する/高速に切り替えて進める行為の総称です。
マルチタスクデバイス以前にあった、家族がテレビの前に集まり同じテレビ番組を視聴する・話題にする、ということはなくなりつつあります。または縮んでいます。“インターネットってみんなで見ないよね?”という共通コードが前景化し、知ってる者と知らない者を分断します。個人がアルゴリズムでネット配信された情報を受け取り続け、自身の興味のある情報だけにしか触れなくなる/メディア・SNS・広告情報が個人を直撃する。もはや我々は<世界>を共有していない。大文字の<世界>だったものが、小文字の<世界>への追求に変わっていく。いまや他人がどんな音楽を聴き、どのようなコミュニケーションを求めて音楽を聴くのか、それさえもわかりにくくなっています。
現代のブランディングは、ネットに重心を移しつつCEP起点で「一貫メッセージの断片」を反復し、ブランドの便益と独自性を担保しながら、ネット空間上で面の到達を内包させ、その計測は短期の増分と長期の想起・連想を分け、店頭×ECの「買える環境」まで統合する。――この両利き設計こそが、注意が分散する現代で「思い出され、選ばれる」ための大過のない選択だと考えます。
今日もっとも重要なブランディングの能力のひとつは、生活者を文脈ごとに理解する力です。ここでいう理解とは、同調や迎合ではありません。人が何を語り、実際にどう動き、それがどんな状況(いつ/どこで/誰と/どんな気分で/何の目的で)で起きたのかを、ひと続きの線として捉えることを指します。
具体的には、日常導線をたどって状況別の想起の入口(CEP)を見立て、色・形・音・メッセージなどのブランド固有の要素が“そのブランドらしさ”の識別に効いているかを確かめます。さらに店頭とECにおける見つけやすさ/買いやすさまで含めて体験全体を測ります。そのうえで、短期の増分成果(CV・ROASなど)と長期の資産(想起・連想・指名検索などを含む)を別軸で検証し、学びをクリエイティブや媒体配分へ循環的に反映していきます。これが、ブランディング評価におけるリサーチの運用サイクルの骨子です。
私たちの注意は断片化し、接触はアルゴリズムに最適化され、購買導線はオンラインとオフラインをまたいで高速に変化しています。過去の成功の“半減期”が縮むいま、勘と事例だけに頼る意思決定はリスクが大きく、リサーチは、不確実性を見える化し仮説に優先順位を与える実務的な手段です。限られた資源をどの状況の誰に/どのメッセージに/どれだけ賭けるかを根拠づけ、組織の視界をそろえる――
いま、私たちが向き合う問いのひとつは、勘で進むのか、リサーチで進むのか、だと思います。
参考文献一覧
近藤 真寿男・近藤 浩之『成功する商品開発――「買いたい」をつくる』B.M.FT、2012年。
谷川 嘉浩『増強改定版 スマホ時代の哲学――「常時接続の世界」で失われた孤独をめぐる冒険』ディスカバー・トゥエンティワン、2025年。
西口 一希『ブランディングの誤解』日経BP、2024年。
ジェニー・ロマニウク 著、前平謙二 訳、加藤巧 監修『ブランディングの科学 独自のブランド資産構築篇』朝日新聞出版、2022年。
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