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ネーミングテストのやり方|4ステップで失敗しない進め方を解説

ネーミングテストのやり方|4ステップで失敗しない進め方を解説
   

新しい商品やサービスの名前を決めるとき、「この名前で本当に大丈夫だろうか」と不安を感じたことはありませんか。
直感やセンスだけに頼ったネーミングは、消費者に響かなかったり、意図しないイメージを与えてしまったりするリスクがあります。

そこで重要になるのが、データに基づいて最適な名称を選定する「ネーミングテスト」です。
しかし、ネーミングテストのやり方や具体的な方法がわからず、どこから手をつければよいか迷っている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、ネーミングテストとは何かという基本的な定義から、記憶テスト・連想テスト・イメージテスト・選好テストといった4つの具体的なステップ、さらにはサンプルサイズの目安まで網羅的に解説します。

ネーミングテストとは?その重要性と目的

ネーミングテストとは、商品名やサービス名の候補が消費者の「記憶」「連想」「イメージ」「選好」にどのような影響を与えるかを、データで可視化する市場調査手法です。
ネーミングテストとは何かを理解するうえで、まずこの定義をしっかり押さえておくことが大切です。

ネーミングが売上に与える影響は想像以上に大きい

実際に、名称変更だけで売上が大きく伸びた事例は少なくありません。

代表的なのが、伊藤園の「缶入り煎茶」から「お~いお茶」への改称(1989年)です。
中身は変えずに名称のみを変更した結果、売上は大きく伸長し、日本の緑茶飲料市場を代表するブランドへと成長しました。

もう一つの例が、レナウンの靴下「フレッシュライフ」から「通勤快足」への改称(1987年)です。
こちらも商品自体はほぼ同じまま、名称の変更が販売実績を大きく押し上げたケースとして広く知られています。

いずれも、商品そのものではなく「名前」が購買行動を左右し得ることを示す事例です。

参考:伊藤園 商品情報サイト よくいただくご質問『「お~いお茶」のネーミングの由来を教えてください。』

直感やセンス頼りのネーミングが招くリスク

社内の限られたメンバーだけで「なんとなく良さそう」と決めたネーミングには、次のようなリスクが潜んでいます。

  • ターゲット層にとって覚えにくく、記憶に残らない
  • 意図しないネガティブな連想を引き起こす
  • 競合商品と類似した印象を与え、差別化できない

こうしたリスクは、発売後に発覚すると莫大なリブランディングコストにつながります。
だからこそ、発売前の段階で客観的なデータに基づいて検証するネーミングテストが不可欠なのです。

ネーミングテストの3つの主な目的

ネーミングテストのやり方や使い方を正しく理解するには、調査が何を目指しているかを把握する必要があります。
主な目的は以下の3つです。

目的 具体的な内容 期待される効果
売上リスクの回避 ネガティブな連想や記憶に残りにくい名称を事前に排除する 発売後のリブランディングコスト削減
客観的な意思決定 社内の好みや声の大きさではなく、消費者データに基づいて候補を選定する 関係者間の合意形成がスムーズになる
ブランドポジショニングの最適化 名称が持つイメージと目指すブランド像の一致度を検証する 市場での差別化と長期的なブランド価値向上

このように、ネーミングテストは「良い名前を選ぶ」だけでなく、「失敗する名前を避ける」という守りの役割も担っています。
感性やセンスを否定するものではなく、直感で生まれたアイデアを消費者の声で裏付け、確信を持って世に送り出すためのプロセスです。

次のセクションでは、この調査を実際にどう進めるのか、具体的な4つのステップを詳しく解説していきます。

ネーミングテストの具体的な4つのステップとやり方

ネーミングテストのやり方の核心は、記憶・連想・イメージ・選好という4つのテストを順番に実施し、候補名を多角的に評価することにあります。
このフレームワークは、楽天インサイトの元顧問・三木康夫氏が提唱するネーミングテストのプロセスに基づいています。

参考:三木康夫によるマーケティングリサーチ概論 第7回 ブランドネームの開発と調査

ここでは各ステップの目的と具体的な方法、質問例を解説します。

ステップ テスト名 確認すること
ステップ1 記憶テスト 一度聞いたら忘れない名前か
ステップ2 連想テスト コンセプトとのズレはないか
ステップ3 イメージテスト ブランドの世界観と合致するか
ステップ4 選好テスト 最終的に「響く」名前はどれか

ステップ1:記憶テスト — 一度聞いたら忘れない名前か?

三木康夫氏によれば、記憶テストの前提となる考え方は「多くの人に少ない接触頻度で、正しく記憶してもらえるのが良いネーミングである」というものです。
この考え方に基づき、ダミー案を含む15〜20個程度
の候補名を回答者に提示し、一定時間経過後に思い出してもらいます。
最初に想起された名前を第一想起、続いて出てきた名前を第二想起として記録します。
また、文字での提示に加えて音声を併用することも推奨されています。

実務では、提示から想起までのあいだに別の設問を挟んで一定の時間を置き、記憶の再生条件を回答者間でそろえます。
提示順は回答者ごとにローテーションさせ、先頭や末尾の案が記憶されやすい順序効果を打ち消しておくことも前提です。

また集計では、正しく再生できた「正答想起」と、他案と混同した「誤想起」を分けて記録します。
誤想起が多い候補は、覚えられていても他ブランドと混同されるリスクを抱えているためです。

  • 質問例:「先ほどご覧いただいた名前のうち、覚えているものをすべて挙げてください」
  • 確認ポイント:想起率には「これ以上なら合格」といった絶対基準はありません。提示した案数や提示方法によって水準が大きく変わるため、同一条件下での候補間の相対比較で判断します。判断の物差しとしては、実在する既存ブランド名などをダミー案に混ぜておき、それを上回る想起が得られるかを目安にすると実務的です。

ステップ2:連想テスト — コンセプトとのズレはないか?

三木康夫氏は連想テストに2つのステップを設けることを推奨しています。
まず製品カテゴリーを知らせない状態で「どのような製品カテゴリーか・どのような特徴を持つ商品か」を自由回答で聞き、次に製品カテゴリーを開示したうえで改めて特徴を質問します。

この二段階設計により、名称が持つ先入観のない連想と、カテゴリー文脈での連想の両方を把握できます。

  • 質問例①(カテゴリー非開示):「この名前を聞いて、どんな商品や場面をイメージしますか?自由にお書きください」
  • 質問例②(カテゴリー開示後):「この商品が〇〇(製品カテゴリー)だとわかったうえで、どのような特徴を持つ商品だと思いますか?」
  • 確認ポイント:連想された内容が当該商品にとって不都合でないか、商品の強みに関連しているかを分析します。その際は率の閾値で機械的に判断せず、
    ①コンセプトと逆行する連想が出ていないか、
    ②不快感や品質・効能の誤認を招く連想がないか、
    ③競合ブランドとの混同が起きていないか、
    の3点で回答内容そのものを精査します。②③に該当する連想は、出現率が数%と低くても除外を検討すべき致命的なリスクです。

ステップ3:イメージテスト — ブランドの世界観と合致するか?

マトリックス質問や5段階評価を用いて、名称が持つ印象を定量的に計測します。
三木康夫氏は「当該商品の基本ポジショニングや築き上げようとするイメージ項目に関し、候補のネーミングがどの程度フィットしているかをテストする」と定義しています。
「親しみやすさ」「高級感」「革新性」「信頼感」など、ブランドポジションに関わる軸を設定して評価してもらいます。

  • 質問例:「この名前について、以下の項目を5段階で評価してください(1:まったく感じない〜5:非常に感じる)」
  • 確認ポイント:目指すブランドイメージとスコアの方向性が一致しているかを確認します。

ステップ4:選好テスト — 最終的に「響く」名前はどれか?

最終候補3〜5案をすべて提示し、「最も好ましい1案」と「最も違和感がある1案」の両方を回答者に選んでもらいます。
好意的な評価だけでなく、忌避される理由を同時に収集することが、このステップの最大の目的です。

  • 質問例①(選好):「以下の候補の中で、この商品の名前として最もふさわしいと感じるものを1つ選んでください」
  • 質問例②(忌避):「反対に、最も違和感を感じる名前を1つ選び、そう感じた理由を具体的に教えてください」
  • 確認ポイント:選好率が高い候補でも、忌避率が同時に高い場合は「好き嫌いが二極化するリスク名」として慎重に扱います。あわせて、提示順による有利不利が生じないよう、候補名の提示順は回答者ごとにローテーションさせます。

ネーミングテストの実施に必要なサンプルサイズと費用

ネーミングテストのやり方を理解したら、次に気になるのは「どのくらいの規模で、いくらかかるのか」という現実的な問題ではないでしょうか。

ここでは、予算策定の参考になるサンプルサイズの目安と費用を具体的にご紹介します。

サンプルサイズの目安は総計200〜300人、ただし提示設計で変わる

消費者を対象としたネーミングテストでは、総計200〜300人が一般的な目安とされています。
ただし必要な人数は総数だけで決まるものではなく、候補名の提示設計によって変わります。
1人に1案だけを評価させるモナディック設計では、案ごとの比較に十分な精度を確保するため1案あたり100〜150人が実務上の目安となり、候補3案なら総計300〜450人が必要です。

一方、1人が複数案を順番に評価するシーケンシャル・モナディック設計であれば、総計200〜300人で4つのテストをカバーできます。

いずれの設計でも、性別・年代・居住地域といった属性ごとのクロス集計が可能になり、「20代女性には響くが40代男性には響かない」といったセグメント別の傾向を把握できます。

サンプルサイズは統計的な精度に直結します。
95%信頼水準・回答比率50%の条件では、標本誤差はn=100で±約9.8ポイント、n=200で±約6.9ポイント、n=300で±約5.7ポイントです。
つまりn=300でも候補間の差が5ポイント程度であれば有意な差とは言い切れず、再調査で順位が入れ替わる可能性があります。

100人未満でも大まかな傾向はつかめますが、誤差幅が10ポイント近くに広がるため、最終的な意思決定の唯一の根拠とするのは避けるべきです。

あわせて重要なのが、誰に聞くかという対象者条件の設定です。
ネーミングの評価は回答者の属性やカテゴリーへの関与度によって大きく変わるため、対象カテゴリーの利用者・購入意向者に絞り込むスクリーニングが前提となります。

ターゲット外の層を含めたまま集計すると、実際の購買層には響かない候補が上位に来てしまうことがあります。

調査費用を左右する要素

費用は調査の設計によって大きく変わるため、一律の相場を示すことは実際には難しいものです。
具体的な金額は案件ごとの見積りとなりますので、ここでは費用を左右する主な要素を整理します。

以下の項目が大きくなるほど、費用は上がります。

  • サンプルサイズ:必要な精度と、属性別に分析したいセグメント数によって決まります。
  • 候補名の数と提示設計:モナディック設計は1案あたりの精度が高い一方、案数に比例して必要サンプル数が増えます。
  • 実施するテストの範囲:4つのテストをすべて行うか、記憶テストと選好テストに絞るかで工数が変わります。
  • 既存調査への追加か単独実施か:コンセプトテストなど既存の調査にネーミングパートを組み込む形であれば、単独で実施するより費用を抑えられます。
  • 対象国と言語数:海外展開を見据える場合、言語ごとに調査が必要となるため費用は増加します。
  • 自由回答の量:連想テストの自由回答は分類・集計の工数がかかるため、設問数が費用に影響します。

予算に応じた調査方法の使い分け

予算に余裕がある場合は、十分なサンプルサイズを確保した単独調査で4つのステップをすべて実施するのが理想的です。
一方で、予算やスケジュールに制約がある場合は、以下のような選択肢も検討してみてください。

  • テスト範囲を絞る:候補名を大まかに絞り込む段階では記憶テストと選好テストに限定し、最終候補が固まってからイメージテストを追加する方法です。1回あたりの規模と設問数を抑えられます。
  • 二段階方式:まず社内や少人数での簡易確認で明らかに不適切な候補を除外し、残った候補に絞って本格的な消費者調査を行う方法です。調査にかける案数を減らせるため、全体の費用を抑えられます。

大切なのは、「予算がないから調査しない」のではなく、規模を調整してでもデータに基づく判断を行うことです。
簡易的なネーミングテストであっても、直感だけに頼るよりはるかにリスクを減らせます。
調査の方法と費用感を事前に把握しておくことで、社内での予算承認もスムーズに進めやすくなるでしょう。

まとめ

本記事では、ネーミングテストのやり方について、基本的な考え方から具体的な進め方まで幅広く解説しました。

最後に、本記事で解説したネーミングテストの4つのステップを振り返っておきましょう。

・ステップ1の記憶テストでは、候補名が一度聞いただけで正しく記憶されるかを検証します。
・ステップ2の連想テストでは、名前から想起される内容が商品コンセプトとズレていないかを確認します。
・ステップ3のイメージテストでは、候補名が目指すブランドの世界観と合致しているかを定量的に評価します。
・そしてステップ4の選好テストで、最終候補の中から消費者に最も響く名前を選定します。

この4つのステップは、順番通りに実施することに意味があります。
記憶に残らない名前はステップ1で、コンセプトとズレた名前はステップ2で早期に除外できるため、最終的な選好テストに残る候補の質が自然と高まります。

あわせて、以下の実務上のポイントも押さえておくことが重要です。

  • サンプルサイズは提示設計次第で、モナディック設計なら1案あたり100〜150人、シーケンシャル・モナディック設計なら総計200〜300人が目安。予算が限られる場合は、簡易確認で候補を絞り込んでから本調査に進む二段階方式も有効です。
  • 費用は、サンプルサイズ・候補名の数・実施するテストの範囲・対象言語数によって決まります。コンセプトテストなど既存調査にネーミングパートを組み込む形であれば、単独実施より費用を抑えられます。

ネーミングテストのやり方を正しく理解し実践することで、ブランドの第一印象を大きく左右する「名前選び」の精度が格段に高まります。
まずは自社の商品・サービスの課題を整理し、小規模なテストからでも調査を始めてみてください。
必要に応じて専門のリサーチ会社への相談も検討すると、より確かな意思決定につながるでしょう。

よくある質問

ネーミングテストは社内だけで実施できますか?それとも外部に依頼すべきですか?

簡易的なネーミングテストのやり方であれば、無料のオンラインアンケートツールを使って社内で実施することも可能です。ただし、回答者の偏りを防ぎ統計的に信頼できるデータを得るには、調査会社への依頼が望ましいです。例えば候補を大まかに絞り込む社内検討の段階であれば簡易的な確認でも足りますが、最終決定前に消費者の評価を正確に把握したい場合は、調査会社のパネルを活用する方法が一般的です。目的と予算に応じて使い分けましょう。

候補名がたくさんある場合、何案まで絞ってから調査にかけるのが適切ですか?

適切な案数は調査の段階によって変わります。多数の案から絞り込む記憶テストの段階ではダミーを含め15〜20案を提示できますが、1案ずつ丁寧に評価するイメージテスト・選好テストの段階では3〜5案が上限です。候補が多すぎると回答者の集中力が低下し、データの精度が落ちてしまいます。実務上は、まず社内ブレストで案をリストアップし、先行商標の簡易チェックやドメイン取得可否で法務・実務上の足切りを行ったうえで、記憶テストで絞り込み、残った3〜5案をイメージテスト・選好テストにかける流れが標準的です。

監修

楽天インサイト コラム編集部

楽天インサイト株式会社 マーケティンググループ

約220万人のパネルデータや楽天グループの行動ログ、AIを活用したリサーチで培った知見をもとに、マーケティングに役立つ情報をお届けします。

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