商品と人の心をつなぐラダリング法執筆 : 濱田 倫崇

定性調査は非構成的な手法といわれますがその中でもラダリング法は、インタビューや分析の型が定まっていて、比較的わかりやすい手法です。またラダリング法を実践していなくてもその考え方は定性調査の分析に有効であると感じています。今回はそのラダリング法について書きたいと思います。

ラダリング法とは

「言葉は差異の体系である」と言ったのは有名な言語学者ソシュールですが、その「差異」に着目して価値構造を明らかにしようとしたのがレパートリーグリッド法であり評価グリッド法です。レパートリーグリッド法の方が古く、もともと臨床心理の現場で患者の認知構造を明らかにするために発展したのですが、その手法をマーケティングリサーチに応用して商品の評価(好き嫌い)の「差異」にフォーカスしたものが評価グリッド法になります。そしてその「(人々の)評価の差異」の来し方、行く末といった因果を明らかにする方法がラダリング法というわけです。

ラダリング法を用いた調査は一対一のデプスインタビューで行います。まず複数の評価対象(調査対象の商品と競合など)を好ましさ等で順位付けし、その好ましさの差異は何かを明らかにします。次にその差異は具体的に評価対象のどこに由来しているのか、という具体的な要素を特定したり(ラダーダウン)、逆にその差異があることでどのような気分になるのか、どのような生活が送れると思うのかといった抽象的な概念を聞いたり(ラダーアップ)していきます。このラダーダウン、ラダーアップを繰り返すことで全体の価値構造を明らかにすることがラダリング法です。

例えば、「映(ば)え」が重視されるインスタグラムですが、図1にあるようにその特長と人々の価値観が階層構造でつながっていることがわかります。

インスタグラムの価値構造(一部)

インタビューはどこからスタートしてもよく、インスタグラムはツイッターと比べてどこがいいの?と聞いて「写真が盛れるよね」と回答があったとしたら、そこからラダーアップ、ラダーダウンを行い、話が一通り出てきたら、他にいいところは?という質問を繰り返して全体像を明らかにします。

左側に「製品属性」「機能価値」「情緒価値」「価値観」とありますが、詳しく説明します。

  • 製品属性は、商品の客観的・物理的特長で、いわゆるスペックです。例えば車であれば車格、排気量、安全性能等々になります。
  • 機能的価値は、それぞれの製品属性によって消費者は何ができるか、といった価値です。先ほどの「排気量」という製品属性に対して、仮にそれが「大きい」場合は、「早く加速ができる」「坂道も楽に登れる」ということが機能的価値となります。
  • 情緒価値とは、機能的価値から生まれる個人のポジティブな感情です。「早く加速できる」という機能的ベネフィットに対しては、「運転していてワクワクする」とか「イライラすることなく運転できる」となります。
  • 価値観とは生きる信念や大切にしていること、真のニーズです。「イライラすることなく運転できる」という情緒価値に対して、それが良いと感じている人は「できるだけ時間を有効に使いたい」という価値観につながっているかもしれません。

ラダリング法のポイント

ラダリング法を実践するときに参考になるポイントがいくつかありますので、以下にまとめます。

  1. 1つの商品が、複数の価値観につながっていることがある
    インスタグラムを、承認欲求を満たすためではなく日々の自分の記録として利用している人は、「楽しい思い出をいつまでも残しておきたい」という価値観につながっているかもしれません。商品がつながっている価値観を網羅的に理解し、どの価値観が最も時代をとらえた価値観なのかを吟味するというプロセスも有効です。
  2. 対象者の属性によって、1つの商品でも異なる価値構造になっていることがある
    同じ商品でもそれを利用する人によって異なる価値を感じられていることがあります。社交的な人はインスタグラムを「つながる」目的で使っている一方で内向的な人は「残す」目的で使っているかもしれません。コンセプトの段階で設定したターゲット顧客は、当初想定した価値を感じてもらっているか、想定外のターゲット顧客が想定外の価値を見出していないか検証することが大切です。
  3. 同じカテゴリーの商品でも、商品ごとに価値構造は異なる
    同じカテゴリーの似た商品でも価値構造は異なることがほとんどです。インスタグラムとツイッターはSNSという点では同じですが、そのサービス特長の違いからユーザーが感じる価値は全く異なり、利用者や利用シーンが異なってきます。そのため競合との価値構造の比較を行うことで、自社商品の強み・弱みを把握することができます。一方で、特長や機能価値で差別化できないカテゴリーにおいてはなかなか競合との差別化が難しいのも事実です。デザイン家電が近年はやったのも、他の機能価値で差別化がしにくいためデザインで差別化を図った結果とも考えられます。
  4. 1つの価値観は1つの商品だけでなく、カテゴリーをまたいだ複数の商品につながっていることがある
    承認欲求を満たすことができるのは何もインスタグラムやSNSだけではありません。例えばトレーニングジムのライザップも、社長自ら「ビジネスの成功は承認欲求と自己実現の欲求を満たすことにある」と言っており、インスタグラムと同じ価値観につながっていると考えられます。同じ価値観につながった商品はカテゴリーを超えた競合かもしれませんし、協業できる相手かもしれません。価値観から発想することは、顧客視点のマーケティングを考えるヒントになります。

オンラインの購買データやログデータをはじめとするビッグデータを活用すれば、誰が、いつ、どこで、何を、どのように買ったのか(Who,When,Where,What,How)については以前よりも容易にわかるようになりました。一方で、なぜ(Why)についてはやはりビッグデータから明らかにすることは難しいと感じています。「購買に至った」、「広告をクリックした」という行動の背景にある「なぜ」を理解することにも、このラダリング法は活用できるのではないでしょうか。

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