第19回

定性調査においても、
ログデータの活用があたりまえとなる未来

定性調査においても、ログデータの活用があたりまえとなる未来執筆 : 濱田 倫崇

ログデータを活用した定性調査のベネフィット

定性調査は、数字では表すことができない対象者の言葉や行動から、インサイトを発見したり仮説を構築したりする調査手法です。いま定性調査においても、ログデータ活用の波が押し寄せています。

例えばカスタマージャーニー。定性調査を通じてカスタマージャーニーを作成する場合、今まではインタビューや事前アンケートで思い出しの情報を中心に、いつ、どのようなチャネルで、どのような情報接触を行ったのかを明らかにしていました。ただ、どうしても記憶に頼った情報になるので、例えばどのようなキーワードで検索をしたのか、閲覧したウェブページの正確な順序はどうだったのか、閲覧したことを忘れてしまったウェブページは何か、という情報については正確に把握できなかったのが現実です。

ところがその対象者がPCやスマートフォンを利用してどのようなサイトにアクセスしているのか、といったアクセスログデータがあったらどうでしょう。インタビューをする前に、ある程度対象者のオンラインにおけるジャーニーのアウトラインを理解することができます。

  • どのようなキーワードで検索したのか
  • どのような順序でどのようなサイトやSNSを閲覧したのか
  • 情報接触する曜日や時間帯はいつか
  • 情報接触の前半と後半でアクセスしているサイトはどう違うのか
  • 日ごろどのような情報に興味を持っているか
  • 日ごろどのような商品をインターネットで購入しているのか
  • オフラインの行動に関して調べている事(ルート検索や訪問先の情報等)は何か

このような実態をインタビューの前に把握することができ、それをもとに仮説を立ててインタビューに臨むことができるため(※)、ログデータがない場合のインタビューと比較すると、圧倒的に収集できる情報量が違います。

もともと初めて会った相手を60分や90分のインタビューで理解しようとすること自体非常に難易度の高いことであり、より価値観を深堀りしたい時はエスノグラフィで対象者の生活現場に飛び込んで実態を理解しようというのが定性調査のセオリーですが、エスノグラフィを実施するとなると、圧倒的にコストと時間がかかります。

ログデータを活用すれば日ごろの情報接触の実態がわかりますので、インタビューの中でどのような話を掘り下げるべきか、確認すべきカスタマージャーニー上の仮説は何かについて、あらかじめあたりをつけることができ、効率的にインタビューを行うことができるのです。そしてこれは特定の商品やサービスの購入だけでなく、出産や結婚などのライフイベントの前後における情報接触状況の理解等にも活用できます。

次世代の定性リサーチャーに求められるスキル

さて、実際の案件で分析のためにログデータを抽出すると、n=1でもその人のログデータは膨大となり、例えば3か月のデータが数万レコードに上るケースが良くあります。そして初めてログデータを分析する人(初めてではなくてもですが・・)はそのデータを前にしばし呆然としてしまいます。

このような膨大なログデータの中から対象者の「人となり」を表現するのにふさわしい情報をピックアップするスキルが、今後定性リサーチャーにも求められてくるのではないかと考えています。ただ漫然とアクセスしているサイトや検索ワードのランキングを見るのではなく、その人らしさを表現しているサイトや検索ワードは何か、そのアンテナをピンと立てることができるかどうかが重要です。

具体的に見ていきましょう。アンテナその1は、一つの事象からその人の人となりをイメージする力(想像力)です。

  • 銀座のランチ情報をよく見ていた
    → 銀座によくいく経済的に余裕がある人なのかも
  • 化粧品のアイライナーを探している中で百貨店の化粧品売り場のページを見ている
    → 高級志向でデパートコスメに絞ってアイライナーを探しているのかも
  • いつも検索するときに一単語での検索を行っている
    → ITリテラシー・検索スキルが低い人かも

というような感じです。

アンテナその2は、ちょっとした違和感に気づけるか(洞察力)です。

  • 職業は無職なのに、確定申告について調べている
    → 不労所得があるかも(インタビューしてみると民泊を運営していることが分かった)
  • 専業主婦なのに、転職サイトの年収査定をしている
    → 子育てもひと段落したので再就職しようとしているのかも(インタビューしてみると実は離婚して一人で独立しようと考えていた)
  • 定期的に高価なキッチングッズを購入している
    → なぜ一気にそろえずに定期的なのか(インタビューしてみると日ごろのストレスを、キッチングッズを買うことで解消している)

そして、一つ一つの想像や洞察をさらに結びつけることで、より確からしい仮説に到達することができます。

大量のデータを処理するということについて、定性リサーチャーはなかなか慣れていないかもしれません。しかし、分析をより深める手段として、ログデータを取り入れた分析のスキルを身につけていくことも大切であると考えています。みなさんもデータを活用した新たな定性調査にトライしてみてはいかがでしょうか。

(※)ログデータを利用した上でインタビューをすることのパーミッションを取ったうえで実施

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