デジタル時代のリサーチャーとは執筆 : 澤田 裕行

2021年が始まりました。昨年はコロナ一色、3密回避が叫ばれ、我々マーケティングリサーチ業界も非常に大きな影響を受けました。在宅勤務、インタビューのオンライン化など働く環境や仕事の仕方が大きく変わりましたが、ひょっとしたらいずれは来るであろうオンライン化時代が半ば強制的に早まったのかもしれません。

それと合わせて、我々業界にも大きな影響を与えるもう一つの大きな流れにデジタル化があります。ちょうど昨年、ESOMAR(ヨーロッパ・マーケティング世論調査協会)において、マーケティングリサーチの業界定義が変わるということがありました。ESOMARではこれまでサブカテゴリーとしていた「様々なデータを収集・分析し顧客にインサイトを提供する」カテゴリーを今後マーケティングリサーチの正式な一部として考え、市場定義を変更しました。これにより、マーケティングリサーチの市場規模は約2倍になり、従来のマーケティングリサーチに加えて、新たな領域が加わることになりました。(※1)
JMRA(一般社団法人 日本マーケティング・リサーチ協会)でも2018年、2019年においていわゆるデジタルマーケティングの市場を明示しています。それによると、2018年のデジタルリサーチの市場規模は約23億円、その内容は「パーソナルデータ・ソーシャルデータの処理・解析」や「業務データ(顧客DB、POSデータ、購買データなど)の処理・解析」が主でしたが、2019年を見ると、市場規模は約42億円と約2倍となり、その内容が「顧客の保有するDBを預かり、調査データなどと合わせて分析する業務」「SNSやWEBからテキストやアクセスログデータを収集し、分析する業務」に変化しました。つまり、今後はリサーチャーもこうした領域の知識を習得し、クライアントに対して新たなサービスを提供することが求められることを意味しており、リサーチャー自身もデジタル化を進める必要があると考えます。(※2,※3)

では、リサーチャーのデジタル化、つまりリサーチャーのデジタルトランスフォーメーション(DX化)には、どのようことが求められるのでしょうか。
DXの歴史を紐解いていくと、実はDXといっても様々なレベルの定義が存在していることが分かりました。(※4)

  1. 最も広義のDXを意味するのが社会的文脈で使われるDXです。「ITの浸透により、人々の生活が根底から変化し、よりよくなっていく」と、2004年にエリック・ストルターマン教授が提唱した原義を元にした概念となります。(※5)
  2. 2つ目は、ビジネスの文脈で語られるDXです。ここでは『企業はデジタルテクノロジーの進展で劇的に変化する産業構造と新しい競争原理を機会、または事業継続上の脅威と捉え、対応していくべき』という主張が成されています。日本では経済産業省が2018年9月に「DXレポート ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開」を公開したことで広くビジネス界隈に知られるようになりました。(※6)
  3. 最後は、正に経産省が唱えているDXで最も狭義の意味、つまり日本企業にとってのDXとなります。こちらは、まずは既存(レガシー)システムや硬直化した組織改革、経営意識改革などが主眼として捉えられています。経済産業省のガイドラインにおいても「DX を実現していく上では、経営戦略や経営者による強いコミットメント、それを実行する上でのマインドセットの変革を含めた企業組織内の仕組みや体制の構築等が不可欠」と述べられています。(※7)

原点に立ち返ると、DXは元々「デジタルによる日常生活の変革」を意味していたようで(つまり1に該当)、この視点は「生活者のDX化」という意味で重要な視点です。ただ、その言葉が企業目線で解釈され、現在は「デジタルによる事業構造の変革」の意味合いで使われることが大半となりました(2~3に該当)。しかし我々リサーチャーは「生活者の理解」が主たるミッションであり、その意味ではあくまでも1にあたる「生活者のDX化」を理解した上での対応が大事だと思わざるを得ません。生活者のDX化は一気に大きく激変してきたものではなく、一歩一歩少しずつ既存のアナログをデジタルに変えていったところから、それらを融合させて新しいものを生み出し、最終的には世の中の仕組みを大きく変えていった経緯があると考えます。他方、今回のコロナ禍での変化のようにある特定の社会的変化によって(冒頭で記載したように)『いずれは来るであろうオンライン化時代が半ば強制的に早まった』事象もあるでしょう。
よって、リサーチャーのDX化はどのようなスピード感で進めるべきか?なかなか人の習慣、慣習を変えることは難しいものではありますが、少なくとも「社会的文脈で使われるDX」の動きに遅れることがあってはならないと考えます。

その上で、これからのリサーチャーには、まずは以下のことを始めていく必要があるでしょう。

  • 既存デジタルマーケティングの理解
  • 行動データを含むビッグデータの理解と活用(データ構造、その集計や分析方法)
  • 行動データと意識データの統合的活用とその事例
  • AIの知識(機械学習、ディープラーニングなど)習得とその利活用(例えばチャットボットのリサーチへの応用など)
  • これらデータを取り巻くプライバシー法の理解と遵守(日本の場合は個人情報保護法。EURではGDPR, USAではCCPAが該当します)

もちろん個人で様々な本を読みあさる、など自助努力での習得もありますが、組織としてこうしたエリアを教育する仕組やコンテンツ作りも必要です。我々楽天インサイトは、楽天グループが保有するデータの一部を通じてリサーチャーのデジタルトランスフォーメーションを促進し、組織として知見を深めていきます。そして、社会のみならずビジネス文脈でのDXの動きに遅れることなく、DX化に即したサービスをお客様にご紹介させて頂けるよう、本年も引き続き変化(トランスフォーメーション)して参ります。

※1http://www.jmra-net.or.jp/activities/trend/international/20201016.html
※2http://www.jmra-net.or.jp/Portals/0/trend/investigation/gyoumujitai_44.pdf
※3http://www.jmra-net.or.jp/Portals/0/trend/investigation/gyoumujitai_45.pdf
※4https://www8.informatik.umu.se/~acroon/Publikationer%20Anna/Stolterman.pdf
※5https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/index.html
※6https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html
※7https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004.html

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