楽天インサイト×キーパーソン対談
生活者の意識と行動を捉えるデータインサイトの未来

第4回 進化する技術、変わらない人間の本質 楽天インサイトが語る「マーケティングリサーチ」の伝統と未来

デジタルマーケティングの発展と浸透が進むなかで、マーケティングリサーチ領域においても、よりビッグデータを活用した新しい取り組みの必要性が求められている。この時代において、“人間の本質を見る”上で大切なこと、マーケティングリサーチャーが向き合うべきこととはなんだろうか?楽天インサイトの代表取締役社長田村篤司と、いずれもリサーチ業界をリードしてきたベテランである、顧問の三木康夫とリサーチ統括部部長の澤田裕行が、マーケティングリサーチの伝統と未来について議論しました。

データは正確でこそ意味がある

田村篤司(以下、田村):今年リブランディングを実施した楽天インサイトは、ビッグデータを活用した新しい調査手法の開発と並行して、長い歴史のある従来型の調査手法の発展と基礎教育にも力を入れていきます。今回はその基盤を固める存在であるお二人に参加いただきました。早速ですが、まずリサーチ業務において大切にしてこられたことをうかがえますか?

写真左から、楽天インサイト株式会社 代表取締役社長 田村 篤司/楽天インサイト株式会社 顧問 三木 康夫/楽天インサイト株式会社 リサーチ統括部 部長 澤田 裕行

三木康夫(以下、三木):私は調査会社とメーカーの調査部を経て、現在は楽天インサイトでリサーチの技術顧問をしています。もう50年近く、一貫してリサーチ関係の仕事を続けています。時代は変われど、リサーチ業務において大切なことは変わりません。それは「信頼できるデータを提供する」ということです。調査結果は依頼主企業が何らかの意志決定のために使うわけですから、正確さを欠いた情報を出すわけにはいきません。

澤田裕行(以下、澤田):まったくその通りですね。私も三木さん同様、調査会社とメーカーを行き来していましたが、「データが誤っていた」となると、リサーチャーひいてはリサーチ会社の信頼に大きく影響を及ぼすので、最大限の注意を払う必要があると思います。

三木:正確なデータを提供するためには、「信頼性」と「妥当性」が担保された調査をする必要があります。何度繰り返しても同じ傾向が出るような調査設計でなければ、データの信頼性は保たれません。同時に、そもそもその設計が調査の目的に沿っているのか、妥当性はあるのか、という視点も非常に重要です。この2つのどちらが揺らいでも、正確なデータは提供できません。

簡単に噓がつけるからこそリサーチャーには倫理観が求められる

田村:どうすれば調査の品質は保たれるのでしょうか?

三木:ただ統計学的に正しいサンプリングや集計、分析をするだけでは不十分です。従来型のアンケート調査でいうと、調査員、調査票、対象者、そして調査自体を設計する我々リサーチャーという4つの要素の質をすべて上げる必要があります。特に調査を受けてくださる対象者の方々に、調査票の工夫でストレスを最小限にするという観点も大切です。この各要素における誤差をできるだけ少なくし、総合的に調査の品質を高めるには、リサーチャーの暗黙知がかなり必要なので、教育というかリサーチャー間で共有することが難しいところです。

澤田:聞き方ひとつで人の答えは変わってしまいますからね。人の指向性をよく理解して調査を設計する必要があります。

三木:本当に。たとえばパッケージテストで、円形のパッケージと楕円形のパッケージと四角形のパッケージという3案を並べて提示した場合、四角形のパッケージが最も消費者に選好されたとしても、それが正しい答えとは限りません。円形と四角形の二択だったら円形が勝つかもしれません。そういったように、人の回答特性を理解したうえで、調査データを扱う必要があるのです。

澤田:また、調査結果をもっともらしく、でも恣意的に操作することもできてしまうので、そこは高い倫理観が問われると思います。施策の効果測定などでは、クライアントに「“成功だった”と印象づけたい」という期待があるため、色をつけた考察をしてしまうケースも見てきました。クライアント側にいたときにも、調査結果によっては施策が止まってしまうことがあり、それは何とか避けたい、ということで、調査結果を都合よく解釈することがありました。これらは、本来あってはならないことです。リサーチャーの素養として、たとえビジネスに望まれない悪い結果であっても、常に客観的な第三者の視点でデータに向き合って報告するという倫理観、プロフェッショナリズムは欠かしてはなりません。

進化するリサーチ、変わらない人間の本質

田村:リサーチ手法の進化が続いていますが、今お二人にお話しいただいたことは、そんな中でも変わらずに守らなければいけない「リサーチの本質」ですね。

三木:その通りです。私は、そもそもマーケティングリサーチの役割は変わっていないと考えています。米マーケティング協会の定義によると、マーケティングリサーチの役割は1)市場や消費者の行動、意識からマーケティング上の課題やビジネスチャンスを探してアイデア化する、2)アイデアをコンセプトや戦術に落とし込み、その洗練・評価をする、3)施策の効果測定を行う、の3つです。もちろん、ビッグデータの活用など、テクノロジーの発達を生かしたデータ収集の方法が脚光を浴びていますが、一方で行動観察や行動経済学のような従来のアナログ的なアプローチも進化しています。「人間の本質をどう見るか」に取り組んでいるのは昔も今も同じです。

澤田:同感ですね。近年、確かにリサーチ手法は多様化し、かつ誰でも簡単にデータを集められるようになりました。しかし、そのデータをどう読み解けばいいかわからないという声はとてもよく聞きますね。だからこそ、私たちリサーチ会社の中立性と倫理観に根差した、誠実な“解釈”が、クライアント企業から求められるようになってきています。

欲しいのはデータの“解釈”

澤田:「結果の数値だけでなく、解釈が欲しい」、もっというと「打ち手を提示してほしい」というニーズも出てきています。また、ビッグデータの時代ゆえに、スピードも桁違いに速くなっているので、限られた時間の中でいかに質の高い打ち手を提案できるかどうかは大きなチャレンジです。こうしたクライアントニーズの高まりは、近年で変化している点のひとつだろうと思います。

田村:澤田さんがおっしゃった「打ち手へのニーズ」に応えるためには、我々は十分な注意と配慮をするべきだと思っています。楽天インサイトはリサーチ会社でありながら、同時に楽天グループの一員としてユーザーIDを含め楽天のビッグデータを活用しているので、データの取得元である楽天のメディアでの打ち手が、当然ながら有力な提案になります。それが我々の独自性であり、優位性でもある。また、少なからずのクライアントが、それでよいと考えてくださって特色のある提案を求めていただける。ただ、そこに少しでも、クライアントではなく楽天グループのメリットという思惑が混じってはいけないと自戒していますし、社内にも徹底しています。

澤田:そうですね。その点では、冒頭で三木さんもおっしゃった「リサーチャーの教育」が大きく関わってくると思います。

田村:実際にお二人には今、人材育成も中心的に進めていただいています。それを含め、どういう組織が理想だとお考えでしょうか?

個の強みを活かす組織体制へ

三木:以前と違ってデータの種類も調査手法も膨大に広がり、クライアントのニーズも高度化しているので、リサーチャー一個人ではもうクライアントのニーズをすべてカバーできないのは自明です。なので、マーケティング、サイエンス、エンジニアリング、インサイト発掘、ビジネス戦略立案といった個別領域に専門性を持つ人材が集まり、プロ集団を形成するのが今の時代におけるリサーチサービスのあり方だと思います。加えて、それらの人材をまとめられるインテグレーター的な存在も重要になってくると思います。一方で、クライアントの課題を積極的に解決しようとする熱意と、より良いものを提供しようとするサービス精神も必要です。

澤田:そうですね。個々の高度な専門性を保ってチームで動くのは、実際にはそう簡単ではないので今も試行錯誤していますが、個々は専門性を高め強みを伸ばしつつ、それをチームで共有してお互いに補いながら質の高いアウトプットをクライアントに提供できればと思っています。

田村:では、リサーチャーのあるべき人材像については、どうお考えですか?データに対する客観的で科学的な姿勢は前提として、一方で先ほどの解釈へのニーズを考えると、これからは打ち手思考を鍛える必要があるだろうとも感じます。

澤田:確かに、そうですね。ただ、やはり打ち手思考の前に「結果に真摯に向き合うこと」が大事だと思います。当然、我々リサーチャーにも、またクライアントのマーケターにも、マーケティング仮説やコンセプトが生活者にポジティブに受け止められてほしいという期待はあります。でも、それをいったん置いておいて、まずは生活者の意見をフラットに受け止める。その上で、打ち手を思考していく、この切り分けが求められますね。

設計から打ち手の提案までできる“リサーチのプロデューサー”に

三木:幸い、楽天インサイトにはリサーチ会社出身の人以外にも、広告など楽天グループの別事業から来た人、事業会社、データ会社、その他楽天というブランドの下に力を発揮しようと参画した異業種の人など、多様な経験やベンチャー精神を持つ人たちが集まっています。これを強みとして、チームを組織していく姿勢が、私はこれからのリサーチ会社にとって大事なことだと思います。知見の開発も、打ち手の導出も同じです。こと打ち手に関しては、クライアントと意見を交換し、合意することも大事です。私は日ごろから、この調査を経て得られるデータをどう使うか、どのようなアクションを取るのかをヒアリングすることを勧めています。

田村:打ち手の提案まで担うようになると、クライアントサイドのマーケターとの関わりや、リサーチャーとしての役割の発揮も変わってくると思います。最後に、お二人が考えるプロのマーケティングリサーチャーとはどういう存在か、うかがえますか?

三木:私自身は、リサーチャーではなく“リサーチプロデューサー”だと思っています。クライアントの課題解決を総合的に考えるという意味です。後進の皆さんにも、クライアントが抱える課題を理解し、その課題に対する最適解を得るための調査設計ができ、マーケティングアクションも提案できる存在になってもらえたらと思いますね。私が駆け出しだった70年代は「リサーチャーに頭は要らない」、つまり調査結果の解釈や提言は不要で、正しい数字だけ出せと言われたこともありました。でも今は違います。これからのリサーチャーには、データコレクションに責任を持ちながら、マーケターとシンクロするくらいの気概が必要だと思います。

澤田:これはあくまで私見ですが、私はマーケターが“モノを売る人”のプロであるのに対し、リサーチャーは“人を理解する”プロだと思います。もちろん私もクライアントの担当製品が売れれば嬉しいですが、それ以上に、この人がなぜこの製品を好むのかがわかった瞬間に、大きなやりがいを感じます。今後もチーム一丸となって、“人を理解する”ことにデータや各種手法を使って迫っていきたいですね。

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