ミックステスト=コンセプト・プロダクトテスト(C+Pテスト)
期待される成果
新製品開発プロセスにおいて、この調査の前にコンセプトが決まり、それに沿った商品構成要素(製品そのもの、ネーミング、パッケージ)を基に試作品が作られます。C+Pテストからは、次のような成果が期待されます。
- コンセプト、製品、ネーミング、パッケージ、(価格)が1つになった完成品の受容性の確認・・・上市の可否の判断
- 製品ミックスについての更なる改良情報の取得
- 競合製品に対し、受容性やイメージ(ポジショニング)において、ターゲットの間でより優れていることの確認、及びビジネスソースの把握(どこから売り上げを取ってくるのか?)
- 将来のマーケティング戦略立案に必要な情報の取得(広告での訴求ポイントの確認、コア・ターゲットのプロファイリング、接触しているメディア、カテゴリーの消費・購買行動など)
このほかにC+Pテストの結果と、いくつかのマーケティング戦略のシナリオ(広告投入量、配荷率、サンプリングの個数など)をベースに、上市後半年あるいは1年の間での販売量を予測する「需要予測モデル」による受容性の確認もあります。有力な「需要予測モデル」として、BASES(二―ルセン), Designor(イプソス), eValuate(カンター)などがあります。どのモデルもテストマーケティングを調査でシミュレーションしようとしたものでSTM(シュミレーテッド・テスト・マーケティング)と呼ばれます。各モデルとも世界で多くの実績があり、主要調査項目に関してノームが用意されています。
C+Pテストのメカニズム
C+Pのメカニズムは次のようなトライアル・リピートモデルが基本となっています。
- トライアル率の予測:新製品の購入前に消費者が接触するであろう情報(一般的なC+Pテストや需要予測モデルのBASES,eValuateではコンセプトとパッケージ情報などを、Designorでは模擬シェルフとTVCM)を呈示して購入意向や独自性などを質問するコンセプト評価のパート(ただし100%の銘柄認知度、100%の配荷率を想定している)。
- リピート率の予測:製品を使用した後での購入意向や購入・使用頻度を質問する総合評価のパート(同じく100%の認知度・配荷率を想定)。
調査デザインにおけるFAQ
C+Pテストのデザインについてよく議論されるのは次の点です。
- 調査対象者の範囲は?
C+Pテストの本来の目的は、市場での受容性=どの位売れるか?=上市の可否の判断ですから、ターゲットはある程度幅広く設定すべきと考えます。成熟した市場でしたらカテゴリーユーザーレベル位が妥当と思います。ノンユーザーまでカバーするのは、あまりに非効率的です。20-80の法則が働くと考えれば、カテゴリーユーザーをカバーすれば、近未来の市場のほとんどをカバーしているといってよいと思います。
何といっても重要なのは、対象者が属する母集団の大きさです。ターゲットを絞れば購入意向は高くなるかも知れませんが、母集団の大きさはその分小さくなるので、そのことで販売量が増えるわけではありません。 購入意向の高さだけで判断してはいけません。 - HUTかCLTか?
普段の生活の中で、製品がどのように使用されるのか、によります。缶コーヒーでしたらCLTでよいと思いますが、アルコール飲料でしたら、飲む量・機会、雰囲気、おつまみなども製品評価に重要な要素になると思われるのでHUTが適切と思います。需要予測で予測の精度に決定的に影響するのがリピートする人たちの購入量・購入頻度です(新製品の発売後1年間の売り上げのうち、リピートによるものが約8割といわれています)。需要予測においてトライアル率、リピート率そのものを予測するのはそれほど難しいことではありません。問題なのはリピーターが年間どの位購入してくれるかです。テストした製品が「一回試しておいしいけれども、飽きのき易い製品なのか、癖になってもっと試したくなる製品なのか」を見極める必要があります。ポテトチップスなどで普段の生活では‘~しながら’で一袋食べてしまうのならCLTで3~4枚食べただけで評価するのは妥当性に欠けます。この問題を解決するのは容易ではありませんが、HUTで何回かテスト品を試していただけるほうが需要の予測には向いていると思います(ただしたくさん製品を対象者に預けると、他の人にあげてしまったりすることがあるので、“適量”が大事です)。 - 刺激物(コンセプトやパッケージ、製品)は?
コンセプトの内容・長さは上市後に想定されるコミュニケーションの主な媒体によります。15秒のCMが中心でしたら、その中で伝えられるだけの情報になります。プリント媒体が主でしたら、情報量はある程度多くても構いません。メディアを使わないのであれば、パッケージに書かれている情報だけで十分です。ともすればコンセプトはオーバーステートになりがちです。従って購入量をオーバーエスティメイトしがちです。
コンセプトには実物大(あるいは実物の大きさが想像できる)の写真・ビジュアルが必要です。パッケージはイメージを伝えるのに重要な役割を果たします。 なおパッケージなどのビジュアルはコンセプトシートの左側、コンセプトなどの文字情報は右側におくことをお勧めします(左目から入ったビジュアル情報は右脳へ、右目から入った文字情報は左脳へよりスムースに到達するという実験があります)。
製品の容器は上市のときに使うものである必要はありません。「ありもの」のホワイトパックで代用できます。ただし製品を留め置く量は、対象者あるいは対象世帯で何回か違うオケイジョン、使用法で試せる量が必要です。消費者はその製品に「どれだけの価値が詰まっているか」で購入を決めるのですから、それが分かるようにしてあげないといけません。 - 製品を試用するのは、コンセプトステージでの購入意向者?
実際の購入場面では、トライアルした人しかリピートしないので、コンセプトテストのステージで購入意向のある人にだけ製品テストを依頼する(購入意向のない人には依頼しない)、という説があります。筆者は「絶対に使わない」という人以外には製品テストを依頼するという立場をとります。理由は、1.コンセプトに購入意向を示さなくても、製品を試用したあと購入意向を示す人が多ければ、試供品のサンプリングやデモンストレーション販売を勧めることが出来ますし、2.その人達のコンセプト評価に対する問題点を分析できるからです。ただし販売量の予測の分析は、トライアルのある人達の間でのリピート率で行います。
C+Pテストの分析と需要予測
コンセプト・プロダクトテストには診断情報が豊富に含まれています。分析で特に注意する点は次のとおりです。
- コンセプトの購入意向と製品試用後の購入意向のシナジーがキー
コンセプトの購入意向と製品試用後の購入意向の大きさを集計ベースで単純に比べるだけでは不十分です。コンセプトレベルで購入意向のあった人が、製品試用後にどの位「歩留まるか?」、特にトップボックスの歩留まりの大きさが重要です。トライアルしない人はリピートには結びつかないからです。そのために対象者個々人の購入意向のシフトに注目します。集計ベースでは分析しきれません。 - 4象限分析から、改善点や発売時のマーケティング施策を見出す
C+Pテストの結果、何の修正もなく新製品が発売されるのは稀です。ターゲットにとって、一層魅力的な商品を作るために、下記のようなCとPのシナジーの分析が重要です。対象者を4つの層に分けて主要調査項目とクロスして施策を考えます。これにより、コンセプトやプロダクトの購入意向をドライブするものは何か(このドライバーが広告開発時にUSP=Unique Selling Propositionの候補になります)?コンセプトをどう改良すればトライアルが増えるか?プロダクトをどう改良すればリピートが増えるか?の示唆を得ることが出来ます。
さらに、調査項目に普段接触しているメディアや購入店を含んだタッチポイントを入れておけば、発売時のマーケティング上の打ち手に関する情報も得られます。
- ビジネスソースを同定する
発売される新製品の8割程度が、ライン拡張かカテゴリー拡張といわれています。新製品で得られる売り上げがどこから来るか?カニバリがどの程度あるか?あるいは既存品を含めてトータルの売り上げがどの程度伸びるか?に関する情報は次のように得ることが出来ます。
このためによくある質問は、コンセプトテストの実態把握のパートで、例えば銘柄写真を見せて、「シャンプーの最近10回の購入を考えたとき、どの銘柄を何回購入したか?」を質問しておき、総合評価(プロダクトテスト)時に、「今後10回のシャンプーの購入を考えたとき、(新製品を含めて)どの銘柄を何回購入するか?」を質問します。プロダクトテストで得られた新製品の「回数」と他の製品がPreからPostで減った「回数」は一致するはずですから、新製品の回数がどの銘柄からスイッチしてきたのか、が分かります。
また製品ラインとしての需要増、既存品のカニバリもこの方法で推定できます(ただし100%の銘柄認知度、100%の配荷率の条件下です)。 - 調査結果から販売量を予測する
本格的な需要予測は、調査結果といくつかのマーケティング戦術のシナリオ(広告投入量、配荷率、サンプリングの個数など)を考慮した「需要予測モデル」に譲るとして、ここでは調査結果から販売量を予測する方法として筆者が用いている方法を紹介します。この方法では購入意向の回答カテゴリーが「必ず買う・多分買う」でも「非常に買いたい・やや買いたい」でも同様の予測を得ることができます。
需要予測のモデル式は下図のように非常に単純です。調査結果から、トライアル率とリピート率を予測するのはそれほど難しくありませんが、リピートする人の購入量を予測するのは大変難しいです。リピーターの購入頻度・購入量は当該調査の結果や消費者パネルのデータ、その他のデータ(例えばアルコール飲料は公的統計がある)などから推定します(当然のことながら分析者の恣意性は排除しなければいけません)。
また母集団の定義とその大きさを確実に把握しておく必要があります。(母集団を絞れば購入意向は高くなるかもしれませんが、購入する人の絶対値は小さくなります)
トライアル率の予測はコンセプトテストの購入意向を使います。例えば、トップボックスの%×0.5+セカンドボックスの%×0.2というように0.5とか0.2といった係数を最適化します(コンセプトテストの結果が同じカテゴリーで5ケースほどあれば何とかなります)。最適化の目標値はコンセプトテストの一般情報の中に潜んでいます。普通、一般情報で銘柄認知度、購入経験率(あるいは最近1年間の購入率=トライアル率)、現在使用率などを質問しているはずですが、これらの変数の間には下の図にあるような関係があります。銘柄認知度と購入経験率との関係を見ると認知度が70%ぐらいまでは一次式(直線)で表現できます。この直線の認知度が100%になったときの購入経験率と上の購入意向を使った式が一致するよう、係数の最適化を図ります。
トライアルとリピートの関係も購入経験率と現在使用のチャートから求めることが出来ます。もっと精緻化を求めるなら、他の質問(例えば「独自性」)とかレレバンシーを加味してもかまいません。リピート率を精緻化するなら、製品評価に関係する質問が良いかもしれません。
ちなみにこの銘柄認知率と購入経験の関係はFMCG(fast moving consumer goods) でしたらどのカテゴリーでも同様のライン(関係)が得られます。カテゴリーによってこの関係は運命づけられている、といって良いかもしれません。このラインは歴史の古いカテゴリー、あるいは競争銘柄の多いカテゴリー、非常に強い銘柄が存在するような場合では下振れします。これとは逆に、歴史の浅いカテゴリー、あるいは競合の少ないカテゴリーにおいては上振れします。また同じカテゴリーの中で機能性商品やプレミアム商品はこのラインの2分の1ぐらいのところにポジショニングされます。
銘柄の認知度は発売後の配荷率の進展具合と広告投入量・投入パターン(及び広告のインパクト)、サンプリングの量(そして最近ではSNSなどのインパクト)で決まります。これらの要因をしっかりコントロールすることにより、初めて需要予測が可能になります。
筆者は前回紹介した3つの需要予測のモデルを使った経験がありますが、需要予測は調査結果で得られた数字をそのまま予測モデルに当てはめれば、それだけで正しい答えが出てくるわけではありません。リサーチャーは恣意を排して“リーズナブルな”「パラメータ」を探し出し、リーズナブルな結果を追い求めるのです。シャンプーや洗剤のような使用頻度がほぼ決まっているものの予測は大体当たりますが、低価格の飲料(缶コーヒーなど)やガム・キャンディなど、飽きやすい、あるいはクセになる商品は予測が大変難しいカテゴリーです。
この3つのモデルはそれぞれ予測の精度を発表していますが、予測の数字が実際の販売量に対してプラスマイナス20%以内に収まったケースは8割を越えているそうです(±10%に収まるケースは約6割)。この数字はあまり高くないように感じるかも知れませんが、サンプルサイズ200のとき、30%の購入意向の標本誤差は30%±6%ですから、予測の精度として20%の違いは決して悪くはないのです(36÷30=1.2・・・20%)。
コンセプト+プロダクトテスト(C+Pテスト)のステージでの問題点
- 調査デザインとして、競合条件が加味されているか?
テスト品のコンセプトとプロダクトだけを呈示して消費者の評価をとるのではなく、お店に並んだときの状態を意識して、調査デザインを設計する必要があります。(調査対象者には、少なくとも競合銘柄を意識してもらって、購入意向を質問したい) - 製品に関しては、その「価格だけの価値=バリュー感(value for money)」をわかってもらえるような調査デザインになっているか?
試用量、試用期間が十分であること。食品であればいくつかのレシピを試したり、作る人・食べる人の意見などを加味した評価が必要です。特に需要予測には使用頻度(=購入頻度)の予測精度を高めることが大事だからです。発売後1年以内の需要の8割はリピート購買から来るといわれています。 - 購入意向だけでどれだけ売れるかの判断は難しい
- ラインエクステンションやカテゴリーエクステンション(新製品の8割はこれに該当)の場合は購入意向が高くなりがち。一方で発売時に親ブランドとの差別化(新規性、使用機会など)が十分コミュニケーションされないと期待された売上は期待できない
- C+Pテストだけで需要予測をする場合、マーケットでの成功例・失敗例をベンチマークにし、徐々に精緻化していく。コンセプトの評価とトラッキング調査のトライアル率は、配荷率、広告インパクトが一定水準以上だと相関があるはず。トレーサビリティを確保することが大事
- 調査ターゲットの幅を広げる・狭めることで調査結果としての購入意向は変わります。母集団の大きさを常に意識することが大事です。また調査間の比較ができるように(ノームが作れるように)しておくべきです。例えば調査対象者は常にカテゴリーユーザーにするなど
- コンセプトテストの情報と発売時の製品と合っているか?
コンセプト調査で実際に上市されたときに消費者が得られるコミュニケーションの量・質以上の情報を与えることで実力以上の購入意向を得ることがあります。同様にコンセプトテストでの価格や容量が発売時と異なるのに、コンセプトテストの購入意向だけが残り、予測と実際の売上げのギャップが大きくなることがあります。また製品もテスト時に使用したプロトタイプと向上のラインで製造した製品がレシピは同じでも同一のパフォーマンスであるとは限りません。 - 事前にGo/No Goのアクションスタンダードが設定されているか?
これ以上開発を進めるか、ストップするかのデシジョンはリサーチャーには大変なプレッシャーになります。社内での過去の調査結果の蓄積があり、ノームやベンチマークの設定そしてアクションスタンダードが事前に設定されていればリサーチャーのプレッシャーや開発担当者の納得も得やすくなると思います。
広告コミュニケーションの開発と調査
C+Pテストでビジネスとなりうる需要が確認できたら、次に新製品の発売時に使う広告コニュニケーションの開発がスタートします。
広告コミュニケーション開発のプロセス
広告コミュニケーション開発のプロセスは下図のような5つのステージに分解することができます。広告には大きなコストがかさみがちですが、ステージ2までの早い段階で何を伝えるか(広告のプロポジション=広告コンセプト)の方向性を決めることで、効果的、効率的そして経済的に開発を進めることができます。
新製品開発のプロセスにおいては、市場理解のためのU&A調査、コンセプトテスト、C+Pテストなどでターゲットと広告のプロポジション(USP=Unique Selling Proposition)は決まっています(ステージ2)。クライアントはこれらの情報に基づいて、クリエイティブ・ブリーフ(ターゲット、インサイト、USP、広告のトーン&マナーなどが含まれます)を作り、広告制作会社に広告の制作を依頼します。広告制作会社はクリエイティブ・ブリーフをベースにいくつかの広告表現案を開発します。それらを一層洗練させた上で評価し、アクションスタンダード(選択基準)をクリアした表現案を選択します(ステージ3)。次に選ばれた表現案に基づいて制作された感性広告が選択基準=クリエイティブ・ブリーフに沿った形で広告メッセージを効果的に伝えているかをテストします(ステージ4)。以上のプロセスを通過した広告がオンエアされ、新製品発売に伴うマーケティング活動全体が評価されます(ステージ5=キャンペーン効果測定)。
テスト時に使用した完成広告の評価
ステージ4の完成広告の評価について詳述します。まず広告効果の発現モデルを考え、それに対応する基本的な調査項目を検討するとその骨子は下図のようになります。
調査はCLT(最近ではインターネット調査でも対応可能)でサンプルサイズ100~200、モナディック形式(対象者は1つの制作物を評価)で行われることが多いようです。調査結果の分析の要点は次のとおりです。
- 完成広告はクライアントがクリエイティブ・ブリーフを作り、広告制作会社に依頼したものですから、それがきちんとターゲットにインパクトを持って好意的に伝わっていたか?が分析の中心になります。具体的には:
- ブランド名、訴求点を伝えるインパクトは十分か?
- 訴求点は正しく理解されているか?
- 説得力(購入を喚起する力)は十分か?
- 全体としてのトーン&マナーはブリーフに沿っているか?
- 広告の3要素(ブランド、USP、ストーリー/登場人物)はバランスよくかみ合っていたか?
- クリエイティブ的(トーン&マナー、音楽/ジングル、表現上の独自性)な良さは?
広告コミュニケーションにおけるインサイトの重要性
新製品のコンセプトの要素(消費者インサイト、ベネフィット、RTB、締めの言葉)で使った消費者インサイトは完成広告でも効果的に使われている必要があります。ターゲットとなる消費者にとって少しサプライズがあり、なるほどと思わせる広告は、消費者の記憶に残りやすく、購入を喚起する力も強いからです。
上市後のモニタリング(新製品の消費者トラッキング調査)
新製品が上市され、4Pに代表されるマーケティング活動が始まります。新製品のトラッキング調査は上市後のマーケティング活動のパフォーマンスを評価し、ブランドの価値を高め販売量の最大化を図るための必要な施策(マーケティングミックスの最適化)を目的に実施されます。
消費者に対する調査では、マーケティングコミュニケーションがブランド認知から購買に至るまでのプロセスでうまく機能しているか、プロセス間でギャップの有無を調査します。トラッキング調査ではブランド認知から購買・再購入に至るプロセスを、例えば次のようにモデル化し、それに対応する調査項目を考えます。なお、このプロセスはパーチェス・ファネルといわれます。
パーチェス・ファネル
(ブランド認知)⇒(理解)⇒(好意)⇒(選択=考慮集合に入る)⇒(確信)⇒(購買=トライアル)⇒(再購買=リピート)
トラッキング調査における主なチェックポイントは次のように整理されます。
- ブランド認知からトライアルへのシフトは(コンバージョンといいます=トライアル率÷認知度)?
- トライアルからリピートへのシフトは(リテンションといいます=リピート率÷トライアル率)?
- 広告認知度は広告投入量(GRP)に対し、適切であるか
- 広告内容が十分想起され、メッセージが意図通りに伝わっているか?
- 意図したターゲットセグメント、ポジショニングと上市後のそれが一致しているか?
最後に近藤真寿男さんの「成功する商品開発・・・買いたいをつくる」から、新製品導入に成功するための必要条件と十分条件から、新製品のトラッキング調査関係のコメントと私の手持ちの実例を比べます。
近藤さんは新製品導入に成功するための十分条件として、1:ターゲットの間でのブランド認知度70%以上、2:ターゲットの間でのトライアル率25%以上、3:リピート率51%以上 としています。実例と比べるとトラッキング調査におけるキーとなるマーケティング指標の目標値が分かると思います。
以上で「商品開発とマーケティング・リサーチ」の稿は終わりです。
広告開発プロセスが用意されていて、常に一定水準以上のインパクトのある広告の制作ができているか?
特に完成広告の評価のステージでは、発売スケジュールやオンエアのスケジュールが決まっていて、広告の制作がぎりぎりになり、調査がスキップされることもあるようです。また新製品開発のプロセスから広告開発ははずされていることもあるようです。C+Pテストまででは、4Pのうちの1つしかチェックされていません。(価格は一応C+Pテストではカバーされてはいますが・・・)
広告開発のあと、新製品発売に至るまでの様々な「落とし穴」を列挙すると、次のとおりです。
- 調査で使ったプロトタイプ製品と工場生産製品の品質・容量等が違う。(同じ製品スペックでも微妙に味は違うようです)
- 製造コストや素材調達の問題で、テスト品を上市段階で消費者調査なしに変更する。(社内のテストでは不十分です)
- C+Pテストのときの価格設定と上市時の価格が違う。
- 広告のインパクト(ブランド・訴求点のコミュニケーション)が弱い。特にライン拡張の場合、新製品の訴求力が弱くなりがちです。一方C+Pテストではライン拡張、カテゴリー拡張の場合、購入意向は高くなりがちです。親ブランドとの差別化(目新しさ、使用機会等々)が十分でないと期待された売上は達成できません。
- 投下したGRPが消費者の認知、興味を引く閾値レベルに達していない。
- 配荷のクオリティ・・・目標の配荷率を達成できない、フェイスが取れない、パッケージが目立たない、など。
以上、「調査が予測を外す理由」を筆者の経験に基づき整理したつもりです。
調査システムの問題と属人的な問題が、新製品開発プロセスの後期になるほど多くなっていることを、特に理解して頂きたいと思います。
新製品開発・発売の成功確率を高めるために必要なことは
新製品開発を含んだすべてのマーケティング活動に携わるマーケターにとって、調査は説明責任の道具であることを認識して頂く必要があります。正確なROIはわからなくても、ROIを高めるものだ、という認識を持って頂くことが重要です。
そのために:
- 新製品開発システムとそれを支援する調査システムを理解して頂く/クライアントの社内に確立する/調査会社から提案する…新製品開発のステージゲートの理解が重要
- 新製品開発のマネジメントシステムを作り、維持、発展させていくマネジメントのリーダーシップ
- ブランドマネージャーと社内・社外のリサーチャーのコミュニケーション
- リサーチャーサイドの努力:ベンチマークやアクションスタンダードがわかりやすいように、調査デザインの統一化、教育を行う