価格と消費者心理

価格の知覚

消費者は購入しようとしている商品の価格が「高い」、「安い」、「妥当」をどのように判断しているのでしょうか?

消費者の価格の知覚とは、商品の販売価格に対して感じる「高い」とか「安い」、あるいは「妥当」といった評価のことです。対象となる商品の価格評価は、消費者が抱く「期待価格」(内的参照価格といいます)を基準として、実際の販売価格の差によって生じます。この期待価格のことを「参照点」(Reference point)ともいいます。内的参照価格は消費者がその価格が妥当かどうかを判断する際に基準となる、自分の経験に基づく記憶の中の価格です。言い換えると、その人にとっての「値頃感」です(内的参照価格に対応する概念として、「外的参照価格」があります。これはメーカーの希望小売価格、当店通常価格など外部で参照される価格情報のことです)。

消費者は購買決定にあたり、まず1.商品の価格を見て、2.自分の内的参照価格に照らし合わせ、3.高い、安い、妥当(もちろん品質も加味されます)を判断し、4.自分の判断に確信があれば、5.購買の意思決定に至ります。自分の判断に自信のない場合は、他の商品の価格を調べ(外的参照価格)、上記の3.以下の過程を繰り返します。このプロセスを繰り返していくうちに内的参照価格は更新され確信になっていくのです。

「内的参照価格の特性」と考えられる[マーケティング戦術での応用]を図表1に整理しました。消費者にとって、ある商品の価格に対する割安感(お徳感)は内的参照価格が高くなるほど強くなるので、マーケターは消費者の参照点を見極め、内的参照価格をできるだけ高い水準に保つこと、あるいは内的参照価格を下げないことが重要です。内的参照価格が高いということは、ブランド力が高いということですし、ライン・エクステンション時にも有利に働きます。EDLP(Every Day Low Price)のほうがH&L(High & Low)より内的参照価格を下げないことでは、効果的と言われています(日本のようにEDLP の店とH&Lの店が近くにあリ、消費者が価格を比較できるような場合はわかりませんが・・・)。また家電などがオープンプライスを採用しているのは内的参照価格をはっきりとは分からないようにしていることによります。

価格の評価(内的参照価格)

参照点を調査する方法としては、PSMがあります。[1-高いと思う価格=高いとは思わない価格]と[1-安いと思う価格=安いとは思わない価格]の交点(高いとは思わない人と安いとは思わない人が同数存在する価格=Indifferent Price Point=IPP)が「値頃感」(参照点)であるといえます(参考までにPSMの簡単な説明を添付します)。

PSMとは?

プロスペクト理論の価値関数

何故、参照点を見極めることが大事か?をプロスペクト理論の価値関数で説明することができます。図表3を参照ください。

プロスペクト理論の骨子のひとつに「損失回避性」があります。それは同じ規模の利得と損失を比較すると、損失のほうが1.5~2.5倍重大に感じることです。図のように参照点を基準にして200円得した(安い)と思う価値を1とすると、200円損した(高い)、と感じる不満足度はその1.5~2.5倍になるということです。その例として、歯磨きのコンジョイント分析による実験では、基準価格450円のときの価格の部分効用値を0としたとき、70円安い価格の380円での部分効用値は0.40であるのに対し、70円高い価格の520円のときの部分効用値は-0.98で、0.98÷0.40=2.45倍重大に消費者は考えていることが分かります(出所:木戸茂(2014年)、「消費者行動のモデル」p94、朝倉書店)。

PSMを使う調査で、対象商品の設定価格がIPPより高いことの購入(意向)へのインパクトを、ともすれば過小評価しがちですが、注意が必要です。

プロスペクト理論とは?

価格感受性を下げる方策

ナイジェル(T. Nagel)は消費者の価格感受性が低くなる(価格が高いか安いかを気にしなくなる)要因として、下の図表にあるように9つ上げています。ほかには季節・産地限定とか特別仕様といった数に限りがあることも要因として挙げられると思います。

価格感受性(Price Sensitivity)が低くなる要因

メンタルアカウンティング(心理的会計)

購買意志決定時に同じ条件でも、消費者が問題をどのように認識し、どのように解釈するか(消費者をどのように認識・解釈してもらうのか)によって、意思決定の結果が異なることが、様々な実験で分かっています。

図表5のような場合(USAでの実験です)、○のついているほうを選ぶ人が多いそうです。図表の1番目と2番目のケースに関連することですが、「一流ブランドと考えられている商品の場合、値下げの金額表示より、比率表示のほうがよく売れる。二流以下のブランドの場合はその逆」(小嶋外広、1959)という研究もあります。

また、商品の心理的価格付けとして、「端数価格」、「威信価格」などがあります。

メンタルアカウンティング(心理的会計)

価格に対する心理について、このシリーズのコラムのどこかで(おそらく行動経済学関連のところ)フォローしたいと思います。

次回は[購買から購買後評価・顧客満足]です。

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