消費者の記憶と知識について

消費者の持つ知識(特にブランド知識)を理解するためには、消費者が情報を記憶していく仕組みである記憶システムの構造と記憶のプロセスについて把握する必要があります。

記憶のプロセス(記憶の二重貯蔵モデル)

消費者の五感を通して入力された外部からの情報は、まず感覚レジスターに入力され、「感覚記憶」として、極めて短時間だけ保持されます。そしてこれらのうち、注意が向けられた情報、あるいは何らかの意味が見出された情報のみが短期貯蔵庫に転送され、そこで「作業記憶(Working Memory)」として一次的に保持されます。さらに保持されながら適切に処理がなされた情報は、長期貯蔵庫に転送され、長期記憶として半永久的に貯蔵されます。

図表1において、外部情報が感覚記憶を経て作業記憶に、さらに長期記憶に転送される際のプロセスを符号化、短期貯蔵庫と長期貯蔵庫の情報が経時的に保持されている状態を貯蔵、長期記憶や作業記憶から情報を適宜引き出すことを検索と呼びます。

符号化(=イメージ的には脳へプログラミングする方法)とは、入力された外部情報に対して、既存の知識を用いて意味づけや解釈を行い内部情報としての記憶に組み込むこと(一般に認知要素という)をいいます。検索とは、情況や課題に応じて、特定の記憶表象を適切に探し出すことです。購買行動は、このプロセスを通って行われるのです。

記憶のプロセス:記憶の二重貯蔵モデル

では、どのような方法であれば、情報が長期記憶により強く保持されるのでしょうか?言い換えると、どのような条件があれば「符号化」しやすくなるのでしょうか?図表2にまとめました。

情報が記憶により強く保持されるには・・・

記憶はどのように情報を保存するのか?

消費者の知識は、製品カテゴリーやブランドに関係した概念や自らの経験など多くの関連情報を、記憶にとどめるように体系化されたシステムであると考えられています。記憶内に、ネットワークのように符号化された認知要素が互いに関連性を持ち、構造化されて保存されているイメージです(この「知識体系」を連想ネットワークといいます)。入力される情報は多くの関連情報を保持している、連想ネットワークに保存されます。

ブランド知識を例にとってネットワーク構造を説明します。私のコラムの第14回、「ブランド知識」と重複する部分がかなりありますので、こちらもご参照ください。

ブランド知識とは、経験を通じて消費者の頭の中に蓄えられている事柄のことで、情報が一貫したまとまりを持ち、問題を解釈し、解決するための思考パターンをすぐに呼び出せるようになった状態のことです。ブランド知識は製品やブランド、属性といった対象や自らの経験といった認知要素が、消費者の長期記憶内において、あるまとまりを持った認知構造として貯蔵されているのです。ブランド知識がどのように消費者の頭の中に蓄えられているか、を理解するモデルのひとつが連想ネットワークです。

ネットワーク構造とは、あるブランドAについて、「全体印象」を起点として、Aについての個別情報がネットワーク状に位置づけてあると考えられています。消費者は様々なタッチポイントでAに接触するたびに、このネットワーク構造を更新し続けているのです(ネットワークのパスが太くなったり、細くなったり新たにできたり)。

このようなネットワーク構造を理解するためには、投影法やその他の技法を使った定性調査が適しています。ラダリングテクニックや評価グリッド法を使えば、上位概念、下位概念に分けて、階層構造でネットワークを整理することができます。競合ブランドに対しての自社ブランドの強み・弱みの把握、ヘビーユーザー・ライトユーザー別にネットワーク構造を理解することで何がドライバーになっているかも理解できます。

また、ブランドの知識構造だけでなく、カテゴリーのネットワーク構造を理解することでカテゴリーにとって何が重要なのかを理解できます。

消費者の知識構造:連想ネットワークモデル

香水の連想ネットワークモデル

消費者のカテゴリー知識構造

消費者が商品を特定のグループに分類することを商品カテゴリー化といいます。商品カテゴリー化も消費者の認知構造の一つです。

消費者はある商品について、これは缶コーヒーだ、カメラだ、風邪薬だ、というようにカテゴリーに分けて理解することを普通に行っています。また消費者の間で、カテゴリーに対する共通の概念(缶コーヒーといったらこのようなもの)があるので、コミュニケーションも円滑になるのです。

商品カテゴリー化は消費者が店頭で商品を探すときの重要な手がかりになります(パッケージの開発では“らしさ”が重要になります)。またポジショニング戦略でも、消費者のカテゴリー知識構造を利用するとスムーズに知覚されます。また、カテゴリー化は商品カテゴリーが名詞として言葉で表現できなくても存在することができます(たとえば、ポッキーのようなもの、キットカットのようなものでよいのです)。既存カテゴリーの中で4~5番手にいるよりも、サブカテゴリーを創り、カテゴリー・チャンピオンであることのほうが大事です。

カテゴリー構造の理解は市場構造を把握しブランド間の競争関係を理解する上で、またカテゴリーマネジメント戦略を考える上でも重要な情報です。

消費者のカテゴリー知識構造(1)

カテゴリーという視点から消費者の認知構造の捉え方として、分類学的カテゴリー構造典型性に基づくカテゴリー構造、消費者のコンテクストに依存するアドホック・カテゴリー構造(コメントは省略します)があります。

分類学的カテゴリー構造

分類額的カテゴリー構造は大きく3つのレベルで階層化されます。抽象度の高い順に、上位レベル、基本レベル、下位レベルです。この下位レベルの下にカテゴリーメンバー(ブランド単位)が組み込まれていきます。一般に学習によって最初に獲得されるのは基本レベルのカテゴリーの知識であると考えられています。図表5にあるような、茶、水、コーヒーという基本レベルのカテゴリーは、消費者が最もよく使う分類で、そのカテゴリー全体を反映した鮮明な心的イメージ(ネットワーク構造で理解できます)を持っています。

この基本レベルのカテゴリー知識を獲得した後に、知識の増大とともに上位と下位の方向にそれぞれのカテゴリーが構造化されていきます。上位へはより抽象的な「飲料」というカテゴリー知識が獲得されます。一方で下位の階層に向かっては、より具体化された、茶には「紅茶、日本茶、ウーロン茶」などの種類があるという、下位のカテゴリー知識が獲得され、さらに日本茶カテゴリーでは、「おーいお茶、伊右衛門、生茶・・・」という製品ブランドから構成されるカテゴリーメンバーがある、という認知構造ができあがります。

消費者のカテゴリー知識構造(1)

消費者のカテゴリー構造を理解するアプローチのひとつとして、グルーピング・テクニックがあります。20~30の商品をいくつかのグループに分けてもらい、その理由が分かれば良いのですが、次のように工夫すれば、より良い情報が得られます。

Q1:この全体を(メーカー以外のことで)2つのグループに分けてください
Q2:そのように分けた理由は何ですか?このグループの特徴は?

これを何回か繰り返します。そうすることによって、グループに分けた順序とその理由が分かります。定量調査で行えば商品ごとに分けられた理由がコーディングできますから、コレスポンディング分析が使え、デンドログラムとマッピングから市場の構造が理解できます。

典型性によるカテゴリー構造

典型性に基づくカテゴリー構造とは、カテゴリー間に明確な境界線を引くのではなく、そのカテゴリーを代表する典型例の認識度合いからカテゴリー構造を捉えるものです。この構造では、カテゴリーを代表するような典型的なブランドや製品カテゴリーの(抽象的な)イメージが、そのカテゴリーの中心に位置づけられ、他のブランドやイメージは中心から順に遠ざかるように、認識されると仮定されます。

カテゴリーを代表する典型事例として2つのタイプが考えられています。
プロトタイプ:カテゴリーの中心にある典型的属性を持つ抽象的イメージ(ビールといえば、鮮度、のど越し・・・)
エグゼンプラー:カテゴリーを代表する具体的なブランド(ビールといえば、スーパードライ、一番搾り・・・)
このカテゴリー構造は個人により、また同一消費者でのコンテクストにより変化します。

商品カテゴリーで典型的とされるブランドのほうが想起されやすくより優位な競争優位性を築くことができます。“ビールといえばスーパードライ、スーパードライといえば鮮度”,“スカッとさわやか、コカコーラ”というような結びつきができると本当に強いブランドになります。

消費者のカテゴリー知識構造(2)

次回は消費者の「関与」と「態度」について紹介する予定です。

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