強いインサイトには葛藤がある
インサイトを探るための調査手法の代表的なものに「行動観察調査」や「エスノグラフィ」があります。また最近では対象者とのエンゲージメントを組み込んだMROCのようなアプローチもあります。
実際に生活者の行動を観察することにより、本人も気がついていない隠れたニーズや行動の背景にある深層心理を探り出そうという手法です。
新製品のアイデア・ジェネレーションはワークショップ形式で行われることが多いようです。いろいろなバックグラウンドを持った人達から成るチーム内でのブレーンストーミングが画期的なアイデアを生み出す確率を高めます。
ワークショップの進め方は、次のとおりです。
- 観察や情報収集の中で得られた、事実のなかで「そうだ」と共感できるものをすべてポストイットに書き出し、壁に貼る
- その事実の背後に存在すると思われる、共通する意識やニーズをグルーピングする(背後仮説のグルーピング)
- 数多くの背後仮説をさらにまとめた上で見えてくる、よりシンプルで大きな仮説(共通仮説)を考える
- 共通仮説ごとに事実に立ち戻りながら、「ニーズ」と「葛藤」を考える。(キーインサイト)
ここまでのプロセスはそれほど難しくはないのです。1回の観察調査での「気づき」は少なくとも100程度は出てきます。
インサイトは新製品のアイデアというマーケティング上の解決策を出して初めて意味を持ちます。新製品のアイデアにまでたどりつくには、良いファシリテーターにワークショップ参加者が右脳を刺激してもらう必要があります。新しいアイデアであっても、すでに存在しているものに何かを付け加えたり、修正を加えたり、新しい組み合わせであることがほとんどなのです。(ですから、できるだけたくさんの事実の引き出しを持つことが大事なのです)
住宅リフォーム会社の例をとると、乳幼児のいる家庭の、「のびのび育てたい、感受性を育みたい、いろんなものに触れさせてあげたい、口に入れても安全な自然素材で作りたい」といった観察から得られたニーズは、共通仮説としての「子供にいろいろな体感や体験をさせてあげたい」ニーズに収束し、このニーズ(インサイト)から展開される新製品のアイデア(コンセプト)の一つは、「おうちが‘体験遊び場’」となり、その属性は「手触りが良い、ナチュラルデザイン、傷がついても味が出る家、アレルギーフリーなど」となるのです。
なお、力強いインサイトには「葛藤」があるといわれています。一言で言えば「○○したい。でもできない・むずかしい」です。