ブランドネームは感性評価も考慮すべき
ブランドネームは思い付きで決めるのではなく、製品コンセプトを総合的に補強するものでなくてはいけません。また名前は一度決めたら変えるのは難しいので慎重に決める必要があります。
ブランドネームの開発および選択の基準で重要なポイントは、総合的な好感度とは別に次の3つに整理できます。
ブランドのポジショニング(コンセプト)との整合性
- 意図している商品イメージを強化するものであること
- 製品の特徴や使用便益を示唆するものであること
- ユニークさ、オリジナリティがあること
文字・音として基本的な魅力(感性評価)
- 発音しやすいこと・聞きやすいこと
- 記憶しやすいこと
- 読みやすいこと
ネガティブな要素がないこと
- 不都合な連想を伴うものでないこと(海外で使うことも考慮して)
- 自社の他の商品の名前との間に関係上矛盾のないこと
- 類似商品と混同するものでないこと
- 他企業がすでに登録したものでないこと
新製品のブランドネームを1つに絞り切れない場合、当該商品のターゲットを対象として、上記項目をカバーする、次のようなテストが行われます。
- 記憶テスト;当該商品のカテゴリーを対象者には教えずに、候補ネーミングにダミーのネーミングも含めて、15~20位の名前を用意します。これらを対象者に1~2回、順次提示した後、記憶しているものをすべて答えてもらいます。このとき同時に音声を使うこともお勧めです。
このようなテストをするのは、多くの人に少ない接触頻度で、正しく記憶してもらえるのが良いネーミングであるという前提からです。 - 連想テスト;次に候補のネーミングから連想されることを自由に答えてもらいます。 連想テストには2つのステップがあり、最初に当該商品の製品カテゴリーは知らせずに、どのような製品カテゴリーであるか、どのような特徴を持った商品であるか、を質問します。次に製品カテゴリーを開示して、どのような特徴を持った商品であるかを質問します。このようにして連想されたことが当該商品にとって不都合なことはないか、当該商品の強みに関連したものであるか否か、などについて分析します。
- 商品イメージテスト;テストの後半の部分で当該商品の基本ポジショニングや築き上げようとするイメージ項目に関し、候補のネーミングがどの程度フィットしているかをテストします。
- 選好テスト;最後に候補のネーミングがどの程度好まれているか、嫌われているかを質問します。
以上がネーミングテストのプロセスと評価の考え方ですが、感性評価の側面から見た、ネーミングの評価を紹介したいと思います。(多くは下記の本からの引用です。)上の連想テストのところで、候補の名前を声に出して読んでもらうことも考慮に入れるべきかも知れません。
「名前の発音は漢字やそれが持つ意味とは別に潜在意識に作用します。名前を発音した際に感じる身体感覚は漢字を見て判断するよりも早く、深く意識に届きます。また頻度としても漢字を見るより名前を呼ぶことのほうが多いので名前の持つ発音体感は潜在意識に作用します。」
「年齢によって気持ちよく感じる語感は異なります。赤ちゃんが発音できる言葉はB,M,Pなどの子音を含む言葉です(バーバパパ、ポッキー、マミーポコなど)。また思春期の男の子はGやZといった子音を含む言葉を好むようになります(ガンダムなど)。」
(「図解でわかるパッケージデザインマーケティング」、小川亮、日本能率協会マネジメントセンター、2011とこの中で引用している 「名前力」黒川伊保子、イーステージ出版)
このような感性評価からの知見も取り入れて、‘商品名はブランドパーソナリティを感性的に表現しているか?’、‘商品名とキャッチコピーの親和性はあるか?といった側面も考慮に入れたネーミングの開発と選択のための調査デザインが望まれます。