金の卵はたくさんのアイデアの中に潜む
第3回目のコラムにも書いていることですが、創造的思考とは、全く新しいことを生み出すことではなく、新しい連想、新しい合成など、すでにある概念の要素の新しい組み合わせを考えることです。新しいアイデアであっても、それはすでに存在しているものに、何かを付け加えたり、修正を加えたり、組み合わせを考えたものがほとんどなのです。一つのニーズが満たされれば、次のニーズが生まれてきますし、一つのニーズを満たすソリューションは複数考えられますし、異なるニーズの組み合わせも考えられます。
ですから、アイデアを数多く創出するには、個人においてはできるだけたくさんの「引き出し」を持つことが重要です。問題に対する関与度が高ければ高いほど、情報は集まってくるものです。このような個人(そして関与の方向性が違う)が集まったワークショップとワークショップの参加者の右脳を刺激するファシリテータの存在はたくさんのアイデアを生み出します。通常の決まりきった考えから抜け出し、たくさんのアイデアを生み出す、その中に“金の卵”が潜んでいるのです。
アイデア創出のために必要な情報源は下図のようになります。図中の(消費者のボキャブラリー/使っている言葉)の例を一つ挙げます。「洗髪行動について、「女性は‘髪を洗う’、男性は‘頭を洗う’」と発言しますが、これから女性と男性ではシャンプーに対するニーズが異なり、違う製品を想像できるでしょうか?
アイデア創出のための情報源
アイデア開発の技法はその道の書籍に数多く紹介されていますが、その中でも実務で使いやすいと思われる、ブレーンストーミングの考案者のオズボーンのチェックリスト法を改良した、スキャンパー(SCAMPER)を紹介します。
- Substitute:置き換えたら?
- 他の何かに置き換えられないかを考える(他の人、材料、時間、場所、ルールなど)
- Combine:組み合わせたら?
- 他のものと結びつけられないかを考える(ラジオとテープレコーダーを組み合わせると、ラジカセ)
- Adapt:応用したら?
- 他のものに応用できないかを考える(似たものは何か、真似できることは?別の目的に応用できないか)
- Modify:修正したら?
- 何か修正できないかを考える(大きく・小さくしたら、速く・遅くしたら、軽く・重くしたら、強く・弱くしたら)
- Put to other uses:使い道を変えたら?
- 何か他の使い道がないかを考える(クリップの他の使い道は?)
- Eliminate:取り除いたら?
- 何かを取り除いたらどうなるかを考える(パソコンからキーボードを取り除いたら)
- Rearrange/Reverse:並べ替えたら・逆にしたら?
- 並べ替えたらどうなるかを考える(注文が来てから生産する=デル方式)
なお、コトラーとデ・ベスの共著、Lateral Marketing, New Technique for Finding Breakthrough Ideas, 邦訳「コトラーのマーケティング思考法」では、オズボーンのチェックリスト法とデボノの水平思考に依拠した「ラテラル・マーケティング」として、常識的・論理的な思考から離脱するための方法論として6つの技法を紹介しています。 6つの技法とは:代用、結合、逆転、除去、強調、並べ替え、です。