第35回

新型コロナはマーケティング・リサーチをどう変えるのか

新型コロナはマーケティング・リサーチをどう変えるのか執筆 : 三木 康夫

私たちは1990年頃のバブル崩壊、2000年前後の金融危機(山一証券や長銀の破綻など)、2010年頃のリーマンショック、東日本大震災・原発事故など、「100年に一度」といわれる危機をほぼ10年おきに経験してきました。そして2020年、コロナショックの危機に直面しています。

コロナショックが今までの危機と違う点は、感染リスクに備えるために人々が様々な経済活動を控えざるを得ない(いわゆる“三密”の回避、不要・不急の外出自粛など)ことからショックが生じている点で、金融サイドから始まった今までの危機とは順番が逆であり、影響を受ける範囲も、日本全国、全世代まで及んでいる点です。

ほとんどの人々が制約のある日常生活において不安、不便、不足、不自由などの「不」を実際に体験しています。その体験が人々の価値観やライフスタイル、消費行動に影響を及ぼさない筈がありません。消費行動(衣食住・遊など)や働き方・学び方における「不」を解決していく中で、そして、安全・安心、健康、家族、社会、環境への配慮なども考えざるを得ない中で、新たな価値観やライフスタイルが生まれ、定着していく筈です。その過程で、「不」(モノ)を解決する問題解決型のイノベーションやマーケティング施策が生まれる機会だけでなく、新しい価値観やライフスタイルに合った、かつデジタルテクノロジーを使った新しいサービス(コト)やビジネスモデルのイノベーションの機会も生まれます。
そしてウイズコロナからポストコロナへ移るタイミングでは、「問題解決型」のイノベーションから「心的充足型」のイノベーションが起きてくる筈です。

このような状況認識のもと、マーケティング・リサーチがとるべき対策について考えてみます。
マーケティング・リサーチの定義(2017年のAMA=アメリカマーケティング協会の’定義です。3年おきに見直すことになっていますが、2007年から変わっていません。JMRAも1996年にこの定義を採用)は次のとおりです。

マーケティング・リサーチは情報を通じて、消費者・顧客及び一般大衆とマーケターを繋ぐ機能。その情報は次のために活用される:

  1. マーケティングに関する様々な機会と問題を明確にし、定義づけをすること(市場や消費者行動の実態を明らかにすることから、ビジネスチャンスを見出す)
  2. マーケティング施策を創出し、洗練し、評価すること(実態把握から見出したアイデアを最終製品・サービスに仕上げる)
  3. マーケティング成果のモニタリング(製品・サービスのマーケティング活動を評価し、次の活動に繋げる)

マーケティング・リサーチの定義はその包括性から、コロナ禍によって人々の価値観やライフスタイル、消費者行動が大きく変わったとしても、変える必要はないと私は考えます。しかし文章表現を変える必要はなくとも、マーケティング・リサーチが今まで蓄積してきた常識・知見・ノームはすべてゼロベースで見直す必要があります。いくつかの例を挙げると:

  • 消費者の価値観・ライフスタイルの変化⇒セグメンテーション調査の見直し。ペルソナの見直し
  • 購買行動や選択基準、使用実態の変化⇒セグメンテーション調査の見直し、購買重視点(多属性態度モデル)、ペルソナとカスタマージャニーの見直し
  • 企業イメージやブランドイメージの評価基準の変化⇒ブランドエクイティの構造(特にSDG関係)の見直し
  • ワークスタイルの変化⇒ES(従業員満足度)調査の見直し
  • サービス産業のサービス形態の変化⇒CS(顧客満足度)調査の見直し。同時にES調査も見直し
  • コンセプトテスト、製品テストなどのテスト系はデータ収集方法が変わると(例えばCLT→ネット)ノーム値が動く可能性があります。またコロナ前に比べ現在では評価レベルが下がる可能性があります(制作サイド、消費者とも”心が冷えている?“ため。東日本大震災のあとしばらくはこの傾向がありました)。

また、データ収集の方法はリモート化、デジタル化、オンライン化が一層進む筈です。DI,エスノグラフィー、コミュニティ・リサーチ(MROC)などは適していると思います。しかし、オンラインFGI,ワークショップなどはリアルと比べて、情報の質・量ともに劣るのではないでしょうか?様々な工夫を開発する必要があります。

最後に、AMAでは、マーケティングの定義を3年ごとに見直しています。現在の定義は2017年に見直されたものですが、2007年から変わっていません。次回の見直しは今年の10月の予定です(同時にマーケティング・リサーチの定義も見直されます)。どのように変わるのか(あるいは変わらないのか)見守りたいと思います。

現在の定義は次の通りです。
「マーケティングとは顧客、クライアント、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造し、コミュニケートし、届け、交換するための組織と個人の活動であるとともに、その活動のための一連の仕組み、プロセスである」
(Marketing is the activity, set of institutions, and processes for creating, communicating, delivering and exchanging offerings that have value for customers, clients, partners, and society at large.(approved 2017)

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